一月二日

一、
大晦日に、人間の煩悩と同じ数だけ鐘の音が鳴り止むと新しい年が始まる。
明日というものは毎日同じようにくるというのに、なぜだかこの日だけは特別で、うんざりするほどに浮かれた空気が町中に充満している。
万事屋では年越しそばを食べ終わった途端に新年のあいさつが始まり、重箱に詰まったおせちとお雑煮の争奪戦が勃発した。
そんなこんなで一睡もせずに初詣でに出掛け、帰る途中で人間やらわけのわからない生物やらを不本意ながらも拾い集めて宴会が行われる。
一日続いた馬鹿騒ぎが終わり、正月二日目へと日付が変わる頃、女たちと家庭持ちの尻に敷かれた男連中は福袋の行列に並ぶためにいなくなった。
銀時は後に残された人生の残骸のような男たちを一人残らず万事屋から追い出して、ようやく二日ぶりの睡眠を思う存分味わおうとしていた。
銀時が一人になってようやく一息ついた時、『万事屋の事務所』兼『銀時の居住区』に珍客が顔を出した。
来客を知らせるように叩かれる戸の音に、銀時は正月休業中ですと怒鳴りつける。
騒ぎ疲れた身体は一刻も早い眠りを欲していて、玄関まで追い払いに行くのも億劫だった。
銀時の声に戸を叩く音は止み、諦めたかと思った次の瞬間に乱暴に戸が開かれた。

「ちょっとぉぉぉっ何勝手に開けてんのっ!! 正月早々夜中に仕事してる人間がいるわけないでッ……」

非常識な客へとたっぷりの殺意を含ませた抗議の声を浴びせる途中、相手の姿を目にした瞬間に言葉が咽喉に張り付いた。
冷たく流れ込んだ外気が雪女の凍える吐息のように銀時の身を包み、体どころか心までも凍りついたような錯覚に陥る。
しかし、本当に銀時の動きを止めたものは寒さではなく、来客した人間の存在そのものだった。
その客はいつものような堅苦しい隊服ではなく、黒い着物と防寒のためのマフラーといういでたちで、露出した肌と襟元とマフラーの白さがやけにはっきりと浮かび上がっていた。


二、
正月の深夜、万事屋に急に訪れた土方は銀時の都合など一言も問わず、無言のまま足早に部屋へと入り込んできた。
そうして銀時の左横へと腰を降ろしてからずっと、だんまりを通している。
身動き一つ許されない沈黙の中で、銀時は握り締めた掌が汗ばんでいるのを感じながら、この空気を変える方法を本気で模索していた。
土方のほうから何か行動を起こす気はないようだったから、銀時は仕方なくカラカラに乾いた咽喉を震わせて声を絞り出す。

「……なんで鬼の副長さんがここにいるんですか?」

銀時は真っすぐ前を見据えたまま、隣に座る真選組副長に尋ねてみた。
土方と目を合わせてしまったが最後、銀時は自分を抑える自信がないから、それが恐ろしくて横にいる男に目を向ける事ができない。
ただでさえ連日の寝不足と深酒で、銀時の理性はいまやペラペラの脂取り紙よりも薄い。辛抱というギリギリの崖っぷちに立つ銀時を突き落とすかのように、土方がその頭をコツンと銀時の肩に預けてきた。

「ちょっ! 何してんのっ! あ、見ちゃった」

思わず左に向けた視界の中に、少し頬を赤らめた土方がいた。
瞳も唇も同じようにうっすらと開いて、艶めかしく潤んでいる。
銀時はワキワキと動き出しそうになる自分の右手を左手で押さえながら、土方に質問してみる。

「あの、副長さんもしかして…酔っていらっしゃる?」
「ああ? んなわけねぇだろ」

いやいやアンタッ絶対コレは酔っていますよ、と心の中で叫びながら、銀時は質問を変えた。

「でもお酒、飲んでるよね?」
「付き合い程度だ」

どこでどう付き合ってきたらこんなになるんだっ、そこまでアンタは酒が弱いのか、とコレもまた心の中で叫んで、そういえば弱かったなと思い出す。
とにかく何かしゃべっていなければ頭の中で人として大切な何かが焼き切れそうで、銀時は次の質問を口にした。

「で、何しに来たの?」
「……さっき起きたら近藤さんと総悟の姿が見えねぇから、探しに来た」
「どこの迷子なカワイ子ちゃんなのお前、って心の声が駄々漏れじゃん俺ェェェ!」
「うるせっ!!」

耳元で怒鳴られた土方が、顔をしかめて銀時の肩から離れた。銀時は軽くなった左肩に意識を集中させて、土方が触れていた部分から引いていく暖かさの名残を惜しむ。
土方はというと、銀時から離れて支えの無くなった身体を銀時とは反対側のソファに預け、背中を少し丸めて顔を埋めていた。

「ちょっと、本気でどこまでカワイ子ぶってんの? 襲われても知らないからな……」
「……近藤さんと総悟は?」
「人の話も聞かずに自分の用件ばっかり押しつけるじゃありません! ゴリラならお妙に言われて徹夜の福袋行列だし、沖田君は神楽と新春餅つき大会の会場を手伝ってるよ。朝が早いからそっちで泊まるって、もちろん町内の人間が集団でだけど」
「……俺は?」
「はい?」
「俺はどこに行けばいい?」
「っ!」

土方はソファに突っ伏したまましゃべるから、くぐもった声が泣きべそをかいているように聞こえてくる。
それを聞いた瞬間、銀時の中で理性を縛り付けていた頼りない糸が、ぶちりと切れた。
自由になった理性は脱兎の如くに走り去り、膨れ上がり続ける本能だけが銀時の鼓動を乱していく。
「ああっもう! 人がどんだけ苦労して我慢の子やってると思ってんの? コレ絶対アンタが悪いんだからねっ!」
「は? うわっ重……」

少し荒げた声とともに、銀時が土方の背後から追いかぶさる。
妖怪子泣き爺のように土方の背中にしがみ付いた銀時は、そのまま黒髪に鼻先を埋めて息を吸い込んだ。
てっきりタバコや汗の匂いがすると思っていたのに、香ってきたのは湯浴みをしたばかりのような水の澄んだ匂いで、その意外性が更に銀時の興奮を掻き立てていった。


三、
銀時に背後から抱きしめられ、うなじに吸い付かれても、土方はくすぐったそうに首をすくめるだけだった。
いつものような怒声は聞こえず、拳も蹴りも飛んではこない。

「……っ、なに?」

土方が首だけを回して銀時を振り返る。
酒に潤んだ目元はほんのりと赤く、その赤はそのまま流れるように繋がって、耳たぶを朱色に染めていた。
ミツバチが花に誘われるように銀時の舌が土方の耳穴へと差し込まれる。
とたんに土方の肩がすくみ、耳を犯されかけた側のうなじから頬にかけて産毛が逆立ち肌があわ立つのが見て取れた。

「副長さん、今日は抵抗しないの?」
「っ? あっ……首っが、ゾクゾク……する」

寒気にも似た感覚がうなじから這い上がり、土方は肩を震わせ身体を丸め込んだ。
銀時は、腕の中で逃げる身体を追いかけて、土方の懐へと腕を差し込む。
黒髪の間からのぞく白いうなじに唇を落として、耳元から鎖骨にかけて浮き上がる筋を舌でたどる。
そうすると、滑らかに思えた土方の肌が総毛立ち、銀時の掌でザラリとした感触に変わった。

「やっ、……寒っ、い……」
「寒いんじゃなくて、気持ちよくなってるんでしょ?」
「違っ、鳥肌、たって……いってぇ」
「ああ、ほんとだね」

銀時は、手の中であわ立つ肌を鎮めるように、ゆっくりと肌を撫で回した。
土方の肌はその動きにも反応を返して、さらにざらつきを増していく。
肌を伝って探る銀時の指が、胸の先で立ち上がりかけた土方の小さな粒をみつけて止まった。
そして今度は、小さく飛び出たその場所を確かめるように周辺を丸くなぞっていく。
銀時の指腹は、鳥肌よりも少し大きなざらつきを探って土方を刺激する。

「んっ……、あっ、ん」

銀時の指の下で、肌が小さくぶつぶつと膨れて硬さを増していく。
それと同時に胸の粒も硬く尖ってその存在を銀時に伝える。
胸を撫でると、粒が引っかかってうまく手が滑らないから、銀時が指の先で押しつぶす。

「んんっ、やっ……っく」

土方は身体を丸めて、銀時の手から胸を逃がそうと身じろぐ。
すると体勢上、背後にある銀時の胸に背中がぶつかり、追ってきた腕に強く抱きしめられる。
着物の中では、逃げた罰を与えるように銀時の指が胸の粒をつまみ捩じ上げてくる。
その瞬間、痛みと同時に湧き上がる甘い痺れが土方の背中を反り返らせた。

「痛っぃ……あっ、離っせ、千切れ、る」
「大丈夫だって。痛いだけじゃないでしょ。それにこんだけ硬けりゃ千切れる心配もないし」
「やあっ、もうっそこ、弄んなっ」

土方の懇願に銀時は素直に応じて指を離した。
弄虐から開放された粒は落ち着くどころか、触られてもいないのにジンジンと痺れて甘い疼きを背筋に伝えてくる。
着物に擦れるだけの刺激にもむずがゆさを覚えて、土方は自ら着物をくつろげた。

「ちょっと、なに自分から脱いでんの? いや、銀さんとしてはうれしい限りなんだけど、そこまで積極的なのも怖いって」
「胸、こすれて変な感じがするから」
「ちょちょちょっ、見せてっ! 大変だからそれ見せてみろぉぉぉっ!」

土方の反応があまりに幼すぎて、銀時は眩暈をおこしかけた。
一気に上がった血圧のせいで熱くなる鼻の奥の血流を根性でせき止めて、いたいけな子供相手にお医者さんごっこを興じる変態おやじと化した銀時は、強引に土方の身体を反転させた。
銀時の視界に広がった風景は、はだけられた白い肌と不釣合いに紅く腫れ上がった乳頭。
そのあまりの絶景に銀時は再度めまいを起こしかける。

「胸が、ジンジンして気持ち悪ぃ……」

銀時に両手首を押さえつけられて、身動きの取れない土方が苦しそうに表情をゆがめる。

「舐めたらよくなるかもっ! あっ、いや、ほら、傷口にはツバ付けとけっていうし。」
「傷って、血ぃ出てんのかよ?」
「あっ、いやそこまでは。でも腫れてるし、変な感じがするならつけといたほうがいいよ、うん。絶対つけといたほうがいい」

土方の胸を腫れさせた張本人は、いけしゃぁしゃぁと必死で言い訳を並べ立てる。
普段の土方であったなら、銀時の口から一言漏れる瞬間に頭突きの一つも飛んできたかもしれない。
しかし今の土方は、土方であって土方ではない。
酒に酔った頭では、正常な判断も羞恥心も警戒心さえ動きはしない。白痴にも近い幼さで、土方は銀時の言葉を鵜呑みにする。

「ツバ、つけるから手ぇ離せ」
「いや、こういう場合は人がつけたほうが絶対いいからっ」
「……そうだったか?」
「そうだって、絶対そうに決まってますぅ!」

ふざけるなと怒鳴られないのが少し寂しい気がしながらも、銀時はあくまで土方をだましつづけて丸め込もうとする。
そんな銀時の必死さが酒に酔った土方を簡単に信じ込ませる。
押さえ込まれた両手首に僅かに残っていた抵抗の力を抜いて、銀時から少し目を逸らせる。

「それじゃ、頼む」
「えっ、いいの? マジで?」

これは夢に違いないと、銀時は自分の頬を抓りたくなったが、土方の腕を押さえ込んだ両手は同時に銀時の両腕をも封じている。
夢なら覚めないうちにと視線を土方の身体へと戻して、その艶かしさに心臓が跳ね上がる。
ごくりと音が鳴るほど生唾を飲み込んで、銀時は土方の胸へと顔を近づけた。
唇よりも先に、荒くなった銀時の息が土方の肌をくすぐる。
敏感になった胸の粒は、そんな刺激にも過剰に反応し、疼きをまして土方を震わせた。

「……はっ、ぁ……んんっ……ぅぅ」

生暖かく濡れた肉の感触におびえた土方の身体は、ソファに沈みこんで逃げようとした。
それを銀時が追いかけて胸の突起を吸い上げる。土方の背筋を走り抜ける甘く強い痺れが、反射的に背中を反り返らせる。

「あっ…ふっ、んっく……ぅあっ、あっ」

息を荒げて甘く鳴き声を上げる土方に、銀時は興奮を増していく。
執拗に胸の先に吸い付きながら、硬く尖りあがった乳首に噛み付いては舌で捏ね上げる。
銀時の腹の下では、土方の股間が膨らみを持たせてその存在を誇示してきていた。
それに気づいた銀時は、顔を上げて土方の身体を見下ろす。胸の二つの飾りが赤く充血して、銀時の唾液に濡れて妖しく光る。

「……嘘、つき……」
「えっ?」
「もっと変な感じに、なってんじゃねぇかっ」

潤みきった目で、土方は銀時を恨めしそうに睨み付ける。
その下では、膝をすり合わせて腰に溜まった熱を逃がそうと、土方が身じろいでいる。
狭い場所で押さえ込まれた身体を、無理に縮めて膝を立てるから、土方の着物は腰帯で何とか腹回りにわだかまっている状態だった。
そのいでたちは、銀時を獣へと駆り立てる。
いっそ何も身にまとっていないほうが、銀時を煽らずに済んだかもしれない。

「ココ、苦しい?」
「いやっ、さわんじゃねっ……」
「銀さんがちゃんと責任とって治してやるよ」
「……っ? ひあっ! ああっ、やめっ、……ひぅっ!」

思考の止まった土方の視界から銀時が消え、次の瞬間、生暖かく吸い付く感触が下腹部から伝わる。
つい先ほどまで胸に与えられていたその感触は、いま土方の欲望を包むものと同じはずなのに、その快楽は比べ物にならないほど強烈に土方の身体を駆け巡る。
銀時は、布の中で窮屈そうに首をもたげていた土方を器用に取り出して、まだ育ちきっていなかったそれを口に含みしごきあげた。
頭の上で土方の嬌声が上がる。
その声に呼応して、銀時の口の中では土方は大きく脈打ち始める。

「あっ、あっ、……はなっせ、やっ……ふぁ」

熱はますます下腹にたまり高まっていくのに、酒に酔った身体はfその先へとなかなか行き着いてくれない。
開放されたいのに後一歩が足りない焦燥感が涙となって土方の目じりに溜まる。

「やっぱ酒はいってると勃ちが悪いな。ねぇ、ちょっとこの指舐めて」
「んっ、……んふぅ、んんっく」

有無を言わせず突っ込まれた銀時の指を咥えて、土方は息を乱す。
口の中では土方の唾液を絡ませようと銀時の指が、怯え萎縮する舌を嬲りぐちゃぐちゃとかき回す。
そうして銀時は、糸を引くほどに唾液と絡まった指を土方の口から引き抜くと、勃ち上がり震える土方のモノを無視してさらに奥へと濡れた指をあてがった。

「ひぅっ!」

唾液の滑りを借りながら、土方の小さな口へと少し強引に指先をねじ込む。
乾いた悲鳴が土方の口から漏れる。
それでもいつものような頑なさはなりを潜め、肉壁は銀時の指に馴染もうと自ら収縮を始める。

「おいおい、ずいぶん素直に反応してくれるじゃねぇの。お酒の力はすごいねぇ」
「……あっ?……ひっ、うぁっあっ、んあっ」

銀時は指を土方の中に入れたまま、指を曲げて内壁を引っかくようにしながら目的のものを探し出す。
その場所はすでに膨れていて、肉壁に軽く押し込むだけでも土方の身体は跳ね上がり、閉じきれない唇からは嬌声がこぼれだす。

「いやっ、そこ、だめっ……だ」
「いいよ、とりあえず達っちゃってくれないと、解れきりそうにないし」

銀時はそう言うと、空いた手で土方の固くなった茎部を握りこみ、外気に晒され凍えかけた乳首を口に含んだ。

「ひぅっ、んあっ、ああっ……ふあっ、んんぅっく……ああっ!」

いくら酒で鈍くなった身体でも、同時に3点を攻められては耐えようがない。
我慢しようとする理性が働かない分、その時はあっけなく訪れ、銀時の手中に欲望を吐き散らした。

「気持ちよかった?」

息もろくに整わない土方を覗き込んで、銀時が問いかける。
浅い息と土ビルの隙間からちらちらと見える白い歯と赤い舌のコントラストが眼にまぶしくて、銀時はその唇を口付けてふさいだ。

「んっ、ふぅ……ん」

柔らかい口付けは、土方の身体を柔らかく弛緩させる。
少しタバコの苦味が残る土方の口腔内を舌で優しくくすぐりながら、銀時は手の内に残った土方の白い体液を自分の欲望へと塗りつける。
口付けの角度を変えながら、土方の膝を抱えて上げてその奥へと銀時は自らをあてがった。そして土方の身体がすくみ上がる前に、狭い体内へと一気に捩じ込む。

「うあっ、ああっ、はっ……んんっ」
「もうちょい、ほらっ」
「うああっ……はっ、あぁ……あっ」

張り詰め膨らんだ銀時の頭部が、土方の入り口の襞をいっぱいに伸ばして進入する。
なんとか括れまで飲み込ませたところで、異物を排出しようとうごめく腸壁と、内側から再度押し広げられることを拒み口を閉ざそうとする括約筋の収縮が銀時を締め付ける。
それらのすべてを無駄な抵抗とするために、銀時は一度萎えた土方へと手を伸ばし、二つの錘ごと揉みしだいた。

「んぅっ、やめっ、あっ」

銀時の手淫に意識がそれて、土方の身体が緩む。
その隙をついて銀時は一気に腰を進めた。
そうしてゆっくりと挿送をはじめる。
酒にほだされた身体と土方のぬめりを借りた銀時のモノは、たいした摩擦もなく滑らかに動き出す。
強弱をつけて深浅を測りながら、時折ぶつかる内壁の硬いしこりをわざと押しつぶして、土方の反応をうかがう。

「はっ、ぁあ……、ぃやっ、んあ、あっ、あっ」

焦点の合わない黒い瞳が、鏡のように無機質に銀時を映し出す。
抑えることすらしない嬌声を聞きながら、銀時の中で不安が大きく膨れ上がる。
土方の一番奥まで差し込んで、銀時は動きを止めた。
与えられる感覚が減り、うっすらと土方の双眸に光が戻る。

「……ぁ?」
「ねぇ、いま土方君の中に入ってんのダレだかわかってる? わかってそんな声だしてくれてんの?」
「…………、つづ、き……しねぇ、の?」
「もちろんしたいけどっ、するけどさぁ、もう俺ら犯れればいいだけのお年頃はとっくの昔に過ぎてんじゃん。こういうことはもっとこう、なんていうのっ……」

土方が話を続けようとする銀時を抱き寄せ、耳元でささやく。
それはとても小さな声で、銀時には聞き取れない。
返事のない銀時に、土方は抱きしめた腕に力をこめながら、もう一度ささやく。

「ぎん、とき」
「えっ、あっ、えええっ! うあっ!」

銀時がうろたえ動揺した瞬間、土方の内壁が収縮し、銀時を強く抱き絞めた。
その刺激に耐え切れず、銀時は土方の中で弾けた。


四、
下腹に溜まった熱が一気に開放されると同時に、銀時は叫んでいた。

「とーしろぉぉぉっ! ! …………って、あれ?」

誰もいない、温度の低下し始めた部屋のソファで銀時は跳ね起きる。
胸の動機はいまだに止まず、寝汗が首筋を伝う。
生々しく体に残る倦怠感と、湿って張り付いた下着の不快感が銀時を現実に引き戻しながらも現実逃避させる。

「えっ? なに、今の夢っ? 何しての俺っ、いったいいくつになったと思ってんの俺っ、たかが夢でって、えええっ!」

銀時は頭を抱えて自己嫌悪に陥る。
正月早々、土方との淫夢をみて夢精してしまった自分に激しく動揺する姿は哀れを誘う。
しかもこらえ切れなかったその理由が、夢の中で土方に名前を呼んでもらったことだったとあっては、なんびとであってもかける言葉すらも思いつかないだろう。
しょぼくれた姿でいそいそと洗面台に立つ後姿からは、攘夷時代の白夜叉の片鱗も窺えない。
そんな銀時が、わずかに残った希望を口にして自分を慰める。

「いや、でもほら、あれだ。銀さんて意外とけっこう若いってコトで。それにほら、今日見た夢は初夢で正夢になるっていうしさ。うん、今年の抱負は土方君にはこの責任とってもらうって事でさ、って。どちくちくしょぉぉぉぉっ!」

口にした慰めも、自分がぼやく呟きでしかなく、むなしさと居た堪れなさが銀時の胸に溜まっていく。
せめてもの救いは、この万事屋に誰もいなかったことだけだった。
それぞれの場所で、それぞれの胸に新しい抱負が抱かれ、それぞれの年が始まる。
銀時の新しい一年の中で、先ほど口にした抱負がかなえられるかどうかは、次の除夜の鐘が鳴り終わるまで誰にもわからない。
とりあえず新年早々に銀時は、手に刺さるような水の冷たさに耐えながら、ひたすら手元を泡立てるのだった。



終わり