プロローグ
昔々、ある砂漠の真ん中に小さな小さな名前すら伝わらない小さな国がありました。
あまりに小さな国なので、争い事もなく平和な時間が流れておりました。
たった1つの問題を除いては。
この国から差ほど離れていないこれまた小さなオアシスに悩みの種が1つ植わっていたのです。
種の名はムサ魔人。
この国の守護と引き換えにマモリ姫を要求しつづけている困ったちゃんでした。
さてさて、かわいい姫は渡したくないし国は守らなければ行けないし。
困った王様は魔術師ク=リータに助けを求めました。
魔術師ク=リータの焼き栗占いにより、この国の誰とも違う容姿を持った一人の奴隷を輿入れの際に姫の身代わりに箱詰めする事になりました。
魔術師ク=リータの占いどおり、ある時ある場所で売られていた、この国の誰とも違う容姿を持った奴隷を買い取り、事は順調に進み輿入れの日を迎えました。
輿入れは至極簡単なものでした。
綺麗な大箱にこれまた綺麗な花を敷き詰めそこに偽花嫁をぶち込んで蓋をしてムサ魔人が出てこないうちにオアシスに置いてくるだけなのですから。
ACT.1 ムサ魔人と偽花嫁
ムサ魔人は正直退屈していただけなのです。
有り余る時間と力を持て余し、目に付いた国をそのまま壊しても良かったのですが、それではあまりに一瞬で面白くなくなってしまうのでなんとなく逢ったことも無い姫を要求してみただけなのでした。
箱から出てくるのはそこらへんにいる見なれた娘だとばかり思っていたのに、蓋を開けて少しびっくりです。
表情は全く動いていなかったのでそれほどではなかったのですが、わずかに瞳孔が開く程度にびっくりしたことは間違いありませんでした。
箱から出てきたのはこの砂漠では見たこともないような人間でした。
肌は夜の砂漠に浮かぶ月のように白く、髪は朝日に光る砂金の様に光り輝いているではありませんか。
多少目つきは悪いものの、それすらもそこはかとなく色気を含んだ切れ長の流し目と言ってしまえば充分満足できるものでした。
「おまえがマモリ姫なのか?」
ムサ魔人の問いに、射るような眼差しで奴隷は答えます。
「俺が女に見えるのかよっ!この糞魔人!!」
確かによくよく見ると月のように白い肌にまとっているのはわずかな腰布のみで、貧乳どころか胸はまったいら。
骨格も華奢ではありましたが女のそれとはまるで違っていました。
正真正銘の男です。
それなのにムサ魔人はこの偽花嫁からも一時も目を離すことが出来ませんでした。
ムサ魔人はもうこの偽花嫁がマリモ姫で無かろうが女で無かろうがどうでも良くなっていました。
元々この輿入れ自体がどうでも良いものだったのですが、この結果にムサ魔人は大変満足していることに自分でも気がついていませんでした。
ACT.2 奴隷遍歴
箱詰めされた偽花嫁の名前は奴隷のヒル=マ。
むせかえるような香りの中、上手くまわらない頭でヒルは考えていました。
「今までだって似たようなものさ、まるっきり幸福でもなけりゃ不幸でもない。今だってちょっと運が悪かっただけ、たいした事じゃ無い。」
そう、ヒルにとってこんなことは何ともないことでした。
物心ついたときにはすでに奴隷の身で、それがヒルにとっては至極当たり前の世界だったからです。
奴隷と言ってもこれだけの容姿ですから主には夜の奴隷として扱われていたわけですが、それすらもヒルにとっては思春期に入る前からの当たり前の世界だったのです。
ヒルはまわらない頭で考えます。
しかし考えはまとまらず、負けず嫌いのあの男は以外と優しくて少し暖かかっただの、糞ボンボンの相手はだるかっただの、似たもの同士で馬は合っていたけれどなじめない奴がいただのと、これまでのちょっぴり幸せな思い出や、少しむかつく思い出が万華鏡の様にくるくる×2と近づいては遠のき、遠のいては近づくばかりです。
どうやらヒルが暴れたり逃げ出さない様、花の香りにまぎれて香薬がいれられていたのです。
ついにはどこにいるのかさえ、あやふやになっていた所にきてようやくこんな所で後ろ手に縛られ閉じ込められなければいけない理由を思い出しました。
ヒルは元々奴隷なので、主人が売りたいときに売られ、買いたい時に買われることには慣れていました。
今回だって大差ないとなんの気にも止めていませんでした。
まさか買われた先が王宮で、そこで逢ったマモリ姫が傷の手当てをしてくれるなんて夢にも思わなかったのです。
最初は身代わりになるヒルに申し訳無くてマモリ姫は優しくしたのかとも思いましたが、箱に詰められる段になってマモリ姫はその場の人間全てに反対してヒルを逃がそうとまでしてくれたのです。
なんの見返りも無く自分の為に何かをしてもらったことなど奴隷のヒルにはあるわけがなかったのです。
ヒルは思いました。
「たまには糞姫の替わりに生贄になるのも良いかもな、魔人がどんなの知らねぇが案外どうにかなるもんだ。煮て喰われるか焼いて喰われるか個々から出てからのお楽しみだ。」
ヒルは気を抜けば霞みだす頭の中、かろうじて持ちこたえながら蓋が開くのを待ちつづけるのです。
ACT.3 迎合
「っつ、痛ってぇ!も少しマシに出しやがれっ、この糞魔人!!」
箱が急に浮いたかと思うと勢い良く地面に投げ出されたのですからヒルがどなるのも、もっともなことでしたがいかんせん相手はムサ魔人。
思いやりのかけらも持ち合わせてはいないのですから仕方ないことでしょう。
魔人はヒルの非難の声など全く気にもとめず、初めて見る美しい人間を凝視しています。
さすがのヒルもこの沈黙と視線には耐えきれず吐き捨てる様に怒鳴りました。
「てめぇは糞姫に振られたんだよ!でも奴らからの箱を中身も知らずに受け取っちまったんだから、今更国を襲うのなんのは契約違反だぜ。いっぱい担がれた訳だ。魔人は人を喰うんだろ?今のてめぇにできるのはこのオレ様を煮るなり焼くなり好きに喰らうことくらいだな。」
「喰われたいのか?」
いきなり魔人の顔が鼻先に現れたので、ヒルは内心かなり驚きながらもできるだけ声が震えないように注意しながら答えました。
「さっさと喰えよ。腹壊しても責任はもたねえけどな。」
ACT.4 寝物語
ヒルがどんなに強がってみても香薬でしびれた体と後ろ手に縛られた状態ではまさに文字どおり手も足も出ない状態です。
いつのまにか覆い被さっていたムサ魔人の顔がヒルに近づいてきて、思わずきつくまぶたを閉じて顔をそむけた瞬間、ヒルは耳穴に生暖かい湿った感触を感じていました。
「なっ…やめっ……」
喰い千切られる痛みを覚悟していたヒルはいったいわが身に何が起こっているのか理解しようと努めますが、その間にも聴覚の一番深くでムサ魔人の舌は蠢き続けます。
それはヒルにとって信じられないような快感を与えるものでもありました。
「……やっ………はぁ……な……んで?」
「喰っても言いといっただろう?」
ムサ魔人の声が耳の奥深くをまた刺激します。
耐えきれずに身を捩った瞬間舌は耳を離れ、ヒルが息をつくひまもなくそれは白く折れそうな首へと下りていきました。
「………ぃやっ」
ヒルは今度こそのど笛が噛み破られると思ったのに、ムサ魔人はいっこうにその気配を見せず、ただただ執拗にヒルの肌を舐めとっていくのです。
さすがのヒルにもムサ魔人が何をしようとしているのかが判ってきました。
自分は喰われるはずだったのに何故こんなことになっているのかと混乱すると同時に、元々奴隷の自分には慣れた行為なのに嬌声が止められないことに気づいたヒルの羞恥は激しく、何とかして止めようとしてもあふれつづけます。
「やぁ…んっ、ぐぅっ」
「無理に黙ることはないぞ、オレにとってはその声も御馳走なんだからな」
「っ、さっさと喰らえ……よ………っひゃあっ」
ムサ魔人の意地悪い言葉に一瞬冷静さを取り戻しかけたヒルでしたが、胸の飾りを捻りつぶされてはまた混乱の中に堕ちていくしかありません。
可哀相にヒルの胸の小さな突起は本の薄桃色から内出血を含んだ赤色へと変化していきます。
しかし今のヒルにとってはそれすらも淫蕩の兆しになってしまうのでした。
ムサ魔人は執拗にヒルの胸をいじりまわしながらもその舌を徐々に下ろしていきました。
そしてヒル自身には触れないようにしながら、その浮かび上がる様に白く柔らかい内腿に赤い印を撒き散らすのです。
「やぁっ…も、やめっんん」
ヒルの肢体は快感に打ち震え艶めかしく捩れながらもムサ魔人から逃げようとするのですがムサ魔人の片手で軽くいなされてしまいます。
ヒルの腰に巻かれた布はもうなんの意味も持たず、そんヒルの変化にムサ魔人は明らかに無視をしてくるので、もうヒルはどうしていいかわかりません。
せめて自分で慰められたらと思うのですが、あいにく両腕は冷たい鉄拘束具に捉えられたままでどうしようもありません。
じれったくて思わず腰を揺らしてしまいムサ魔人から冷笑をうける始末です。
不意にムサ魔人がヒルに触れるのを止め意地の悪い笑みをさらに深めながら言いました。
「哀願してみろ。俺をその気にさせられたら触ってやってもいい。」
「………っ!」
あまりの恥ずかしさと怒りにヒルの顔は上気し勝気な目じりには涙まで滲んでしまいましたが、もうその程度に怒りや羞恥では治まることのない熱がヒルを苛みました。
ちからの入らない体を無理やり動かし屈辱を滲ませた顔をムサ魔人の足の間にうずめます。
「んっ、んぐっぅ」
想像した以上にムサ魔人は大きく、手を使わずに全てを口に含むのは無理でした。
それでもヒルは頑張ってそのかわいらしい口だけで奉仕します。
途中何度もムサ魔人に無理やり押し込まれ息が止まりそうになりながらもなんとか持てる限りの技でムサ魔人を追い上げていきます。
ムサ魔人の表情は相変わらず読むことができず諦めかけた時、ふいにヒルの口の中でムサ魔人がひときわ大きく膨張しました。
「ゲホッッ、コフッ、コフッ、グッ……」
気づいた時にはすでに遅く、ヒルは涙をこぼしながら激しくむせていました。
「ヒュ―、ヒュ―、ハッ、ハァ…………っ!」
「まあ、初めはこんなもんだろう。」
ムサ魔人はまだ荒い呼吸を続けるヒルの顎を掴んで無理やり上向かせその口腔内に舌を捩じ込んできました。
「んっつ!」
ムサ魔人の口付けはキスと呼ぶには荒々しく、ヒルは今度こそ喰われてしまうのだと覚悟したほど激しいものでした。
呼吸できずヒルのまた意識がもうろうとしてきたその瞬間を狙ってヒルの後腔にムサ魔人の節くれだった太い指がさし込まれました。
同時にヒル自身も強く握りこまれこすりあげられます。
「いっつ…ハァ、やっ……ふぅっ……っ」
「…………ハッ、グゥ……」
あまりの強引さと痛みににじんだ涙のはずなのに、そこには確かに強い快楽もはっきりと感じられ、ムサ魔人の舌がヒルの頬に流れる涙をすくい舐めるその感触に思わずほとばしってしまいそうになるのでした。
しかし無常にもヒルの根元はムサ魔人によってせき止められ、ただ密が溢れるだけでヒルはまたしても涙を流してしまいます。
後ろの指はいつのまにかグチュグチュと音をたてながら3本に増やされていました。
ムサ魔人の手がふいにヒルから離されたかと思うと、次の瞬間ヒルの胸はうつぶせに撒き散らされた花の上に押し付けられ、腰だけが誘うようにムサ魔人に向けられてしまいました。
この後どうなるかがわからないヒルではありませんでしたが、もう身体の自由は利かず身の内をうねるであろう熱の塊に翻弄されるのを待つばかりです。
折れそうに細い腰を掴むムサ魔人の手に力がこめられ、何かがヒルの中に進入しようとしたその時、フラッシュバックが起こり、先ほどまで自分の口腔を蹂躙していた禍禍しいまでのムサ魔人への恐怖から思わず逃げようとしたのですが。
「やぁっ………ああっ!!…ぐっ、つぅ………ぃやっ、ハッ、…ん!」
時すでに遅くムサ魔人はヒルの中へ無理やりねじ込むと、表情ひとつかえずに自分の良い様にヒルをむさぼりはじめました。
「ヒッ!………フゥ…やっ、はぁん、んッ、んッ……!!」
限界をすでに超えていたヒルは息をするのがやっとと言った状態で、もう快楽すらもわからず自分がいつ絶頂を感じたのやらのやら、何度昇っては落とされたのやら、自分の記憶すらも薄れていったのでした。
エピローグ
恐ろしく淫靡で暴力的な時間はいつの間にやら過ぎ去り、誰かに抱かれているような感触を感じて、ヒルは泣きはらした重いまぶたをゆっくりと開きました。
すると視界に飛び込んできたのは昨晩とはうってかわったムサ魔人の穏やかな寝顔でした。
あまりの違いにヒルは規則正しく寝息を立てるムサ魔人から目が離せなくなっていました。
ふいにムサ魔人の瞳が開き、驚いたヒルは急いで離れようとしました。
「っつ、てぇ……」
しかし少しの身じろぎも今のヒルには厳しく、またしてもムサ魔人の胸に飛び込む形となってしまいます。
頭上でクスリと笑われてしまっては、とたんに頬に熱を覚えもう顔を上げることもできません。
「………この糞魔人っっ!食べ残してんじゃねぇよ!!さっさと喰らいやがれ!!!」
「いつでも喰えるぞ、おまえの方こそまだ喰いたりないのか?」
「なっっ、違っ…………」
精一杯の虚勢を張ったヒルでしたがこうも言い当てられてはグゥの根も出ません。
なぜならムサ魔人の言う通り、まだ体内に残る生々しい感覚とムサ魔人の匂いに張るは発情しそうになる自分を押さえるのに必死だったからです。
ムサ魔人は楽しそうに目を細めるとまた眠りにつこうとしています。
たった一晩で手離せなくなってしまった腕の中にいる華奢な美人と同じ時を過ごす為の算段をしながら。
2人が恋人になる迄には少し時間がかかりますが、ムサ魔人にはヒルを振り向かせるだけの時間がたっぷりありますし、ヒルも今はまだ気がついていませんが今回少しだけ食べられた人間部分の変わりに流し込まれた魔によってムサ魔人との間に何かしらの絆を感じているのですから。
終