チュウズデイ

【チュウ☆モーニング】

穏やかな朝の日に小競り合う声が聞える。

「なんでダメなんだっ!!ヒル魔のあほっ!!」
「あほはテメェだっ、さっさと仕事に行きやがれ!!」
「こんなに頼んでもダメなのか?」
「うるさいっ!誰がするかっそんな事!!」

ムサシからの懇願を冷たくあしらうヒル魔の表情は本気で嫌がっている。
そんなヒル魔を目の前にして尚、ムサシはしつこく食い下がる。

「たかが行ってらっしゃいのキスをなんでそんなに嫌がるんだっ?」
「普通に考えて嫌がるだろうが!!」
「アメリカかぶれの癖に……アメリカでは普通だろうが!」
「オ・マ・エ・は、生粋の日本人じゃなかったか?慎みと恥じらいを重んじる和の心を持ってさっさと出ていけっ!!」

朝からキスなんてとんでもないとヒル魔は本気で怒鳴りつける。
それでもヒル魔からキスしてもらいたいムサシは手を変えて言い寄ってくる。

「このままキスしてくれないなら帰ってこないぞ!!」
「ふざけんなっ!!そのまま死ねっ、むしろぶっ殺す!!」
「何でだー!!」
「テメェこそ何でそんなにしつこいんだ………。」

さすがにこのような馬鹿騒ぎに疲れが出てきたのか、ヒル魔の勢いが弱まり始めた。
ここぞとばかりにムサシは止めを刺しにやってくる。

「ヒル魔にキスしてもらいたいからだろうが。」
「っ!?………うぅ………」
「なぁ妖一、本気でダメか?」
「……名前で呼ぶなっ……糞っ!!ホントにキスだけだぞっ!!それ以上は無いからなっ!!」

心の中でガッツポーズを構えるムサシとは対照的に、心の中で両手両膝をついてがっくりうなだれるヒル魔がそこにいた。
なにはともあれ、一旦口にしてしまった事は何が何でもやらなければならないようで、見るとムサシはもう目をつぶってヒル魔の唇を待っている。
ヒル魔は深くため息をついて、嫌な事はさっさと終わらせようと、素早く触れるだけのキスをした。

「んぶっ………んんっ!んっ!!………ふぅ……んっ………」

ヒル魔の唇が触れるか触れないかで離れていこうとした一瞬の隙に、ムサシの手がヒル魔を掴まえて強引に舌を割り込ませてくる。
ヒル魔がどんなにもがいてみても、大工仕事で鍛えられたムサシにかなうわけは無かった。

「……ぷぁっ……やっめ、むさっ!!んあっ……」

ムサシの手がヒル魔の臀部へと伸びて、その小さく引き締まった筋肉を撫で上げ揉み解そうとする。
ムサシの舌はいつのまにかヒル魔の細い首筋を舐め上げていた。

「もっ……やめろっ!!この糞エロジジイッ!!」
「ヒデデデデデデデデッ!!ひふみゃっいひゃいっへ!!」

ヒル魔がムサシの頬を思いっきり捻りあげて横へ引っ張り引き離す。

「だから嫌だったんだよ!てめぇ、どうせ今は最後までする時間無いんだろうがっ!!この後1人で処理するこっちの身にもなれっ!!!」

確実に上がっていく体温に身を竦ませながらヒル魔は真っ赤な顔でムサシをなじる。
そんなヒル魔を満面の笑みで見つめながらムサシは軽くさわやかに答える。

「それならそのまま待ってろ。今日は早く帰ってくるから。もし一人でしてたりしたら俺はキレて何するか判らないぞ。じゃあ行ってくるー。」
「なっ!!おいっこらっムサシっ!!………フ………ファキィィィンッ!!!」

やりたいことだけやって、言いたい事だけ言うと武蔵はさっさと出ていった。
もうすでにヒル魔の叫びも届かない。
こうしてヒル魔にとって受難の1日が始まる。


【チュウ☆イブニング】


ムサシが仕事に行って早数時間、ヒル魔は昼ご飯も食べられずに悶々と過ごしていた。
身体にくすぶる熱はいっこうに気配を潜めてくれず、かといって今更自分で何とかする気にもなれない。
もう寝てしまえと、ヒル魔は重い腰を上げて寝室へと向かった。

「………糞っ!!」

小さく舌打ちをしてうつ伏せに倒れこんだ布団からはムサシの匂いがしてヒル魔の身体がまたざわめき出す。
一度匂いに気が付くと、身体が勝手にムサシのことを思い出してヒル魔は居たたまれなくなった。

「なっんだよ……もうっ!!」

何度も頭を振ってムサシを追い出そうとするけれども上手くいかず、少しづつ脈が早まり息が浅くなっていくのがわかる。

「………は…ぁ………んっ………」

思わず動かした腰が布団に押しつけられ、それだけでまた身体が反応する。
何度も何度も手を伸ばして自分を解放しようかと思うけれども、ムサシの言葉が耳の奥に響く。
その度に、身体が強張りそれ以上腕を動かすことができなくなる。

「………んっ……むさっ…しぃ………チクショ……」

今のヒル魔に許された事といえばムサシの名前を呼んで、目前の枕に染み付いたその匂いを深く吸いこむ為に唇を落とすだけだった。
そうしてヒル魔はゆっくりと高まる身を持て余しながら、ムサシの残像に縋ってこの酷い時間が過ぎるのをただ待つだけしか出来なくなっていた。



【チュウ☆ナイト】


すっかり暗くなった道をムサシは足早に通りすぎる。
今日は早く帰るつもりだったのに、何故こんな日に限って人数が足りなくなるのかと文句を呟きながら家路に向かう。

「はぁ、アイツまた機嫌悪いんだろうなぁ………」

ヒル魔はムサシに待たされる事を異常に嫌う。
もっとも、その原因はムサシのほうにあるしそれは自分でもわかっていた。
ただそのことだけはどうしようもないので、だからこそヒル魔を他のことで待たせたくは無かった。

「おーい?帰ったぞー……ヒル魔ぁ?」

ムサシが帰ってみると鍵は開いたままなのに、電気はついていないし人の気配もしない。
もしかして怒って家出でもされたかと少々不安になりながら他の部屋を探して見る。
恐る恐る真っ暗な寝室を覗いてみるとそこに見なれた人影があって、ホッと息をつきながらそっと近づく。

「もしもーし、………妖一…くん?……うわっ!!んぐっ」
「んっ………ふぅ…はっ……んんっ………」

ムサシの手がヒル魔の身体に触れる前に、ヒル魔が振り返ってムサシに抱きつきその唇を奪う。
ヒル魔は貪るように舌を絡ませながら必死になってムサシにしがみついてくる。

「んっ……ちょっと待てって!どうしたんだ?」
「は…はぁ……うるせっ……このうそつきめっ!!………人のことこんなにしやがってっ!!わざと遅く帰ってきやがったのかよっ!!」

艶と憂いを含んだしゃべりにくそうな声と、微かに震えているヒル魔の体に触れて初めてムサシはその様子に気付く。

「……もしかして朝からずっとこうなのか?……っ!!イデデデデデデ」
「おまっ……もう最悪だ……」

ヒル魔は何で自分がこんな目にあわねばならないのかと、力の入らない手でムサシの頬を思いっきり抓りあげる。
早く帰ってくるというムサシの言葉を信じて待った時間のなんと長い事か。
ヒル魔を悩ませる疼きはもうとっくの昔に我慢できるようなものではなくなっていた。
けれどもムサシの言葉が呪縛のようにヒル魔に絡みつき、自分で何とかする事を妨げていた。

「………すまん、今すぐ楽にしてやるから。」
「んあっ!………やっ…」

ムサシに組み敷かれたヒル魔は悲鳴をあげる。
ムサシから与えられる刺激の全てが、高ぶりきった今のヒル魔にはもどかしく更なる責め苦にさえ感じられてしまう。

「むさっ……はっ……もういっ…から……だめっだ!!」
「だってきちんと準備しておかないと…」
「いいっ!!もうっ……はやっ……くう………んあぁ!」

ヒル魔の言葉を確かめる様にムサシの指が後孔から入れられる。
まだほとんど触っていないはずなのに、その入り口は柔らかく内壁は潤みきって指を飲みこみ締めつけてくる。

「どんだけ待ってたんだ?」
「……うるっさ……ひぁっ!!あっ……もうっはやっく……やぁぁぁっ!?」

ムサシの指によって無理矢理開かれた入り口に、ヒル魔が1日中待ち望んでいたモノが押し当てられ一気に侵入してくる。
焦らされつづけた身体にはもうすでに快楽以外の何も感じず、その圧迫感さえも今のヒル魔にとっては悦ぶべき物でしかなかった。

「ひぁっ…あっ……あっ…んっ、んぁあっ……むっっさ…むさっし……あっ…」

ムサシもいつも以上に吸いついてくる内壁の刺激と、信じられないくらい素直なヒル魔の反応に飲みこまれて、ただ腰を打つことしか出来なくなっていた。

「あっ!あっ!!……ムサッ…もっ…だっめ……んんんっ!!!」
「うあっ!!ちょっヒル魔ッ……吸いつきすぎっ!!」

ヒル魔が達した途端にひときわ強く内壁が収縮し、ムサシも搾り取られるように持って行かれてしまった。
後にはどちらも汗だくになって胸を上下させながら荒く呼吸を繰り返すしかできなかった。 漸く息が落ち着いてきて、ふと目が合った瞬間ヒルマが真っ赤になってそっぽを向くからムサシは後ろから抱きしめてみる。

「……重いぞ、糞ジジイ……。もう金輪際、朝のキスは無しだからなっ!!」
「うあー……我慢できるか努力だけしてみます。で、今は?」
「っ!!まだやる気かっ……いいかげんにしろっ!!こっちは1日中で疲れてるんっ…んー!!」

ヒル魔が文句を言おうと振り返る瞬間を狙って、ムサシがまたキスをしてくる。

「まぁまぁ、今はきちんと責任とって相手してやるから、な?」
「『なっ?』じゃねぇ!!もう絶対ぶっコロっ、んんッぐっ………」

ヒル魔の言葉などもうムサシの耳には届かず、行き場を失った非難の声はそのまま唇ごと吸い取られ、淫猥な熱へと変えられていく。
こうしてヒル魔の受難な一日はゆっくりと幸せに過ぎていくのであった。