とろ〜りくり〜む on ぷりん物語

何の変哲もない日常に流されながら、中学教師ムサシがいつものように教室に入ると、目に入ったのはプリンの山だった。
男子生徒の誰もが手に手にプリンを持って騒いでいる。
そんな男子の異様な盛り上がりを冷たく眺める女子の姿に、思春期特有の精神的成長の差が見て取れた。

「お前ら何の騒ぎだ?」
「センセー知らないの?プリンを食べようとすると、すげぇ綺麗なプリンの精がクリーム乗せに来てくれるんだって!!はいっ、先生にも1つやるよ。」
「はあ?」

はしゃぐ男子生徒がプリンを片手に熱弁をふるい、その手に持ったプリンをムサシに押し付けた。

「もうっ、そんな事あるわけないじゃん。ムサシ先生も男子のアホ話なんか聞いてあげて、バッカみたい。」
「なんだよっ!!絶対お前ら女子なんかより可愛い子だからなっ!!」
「だったら今すぐ連れて来なさいよっ、だいたい見た奴なんていないんでしょ、新手の都市伝説とか言うやつよ。」
「うっ...うるさいっ!!」
「はいはい、もういいだろう。プリンだかなんだか知らんが、そろそろホームルーム始めたいんだが?」

放っておくとクラス中を巻き込んでエキサイトしてしまいそうな馬鹿騒ぎに、ムサシは教師として終止符を打つ。
そしてまた、いつものようにムサシの一日は変わりなく流れていくはずだった。
その日の夜、貰ったプリンに手をかけるまでは。



<2>


帰宅したムサシは手渡されたプリンを眺めてため息をつく。
こんな子供じみたことであそこまで騒げるのかと感心さえするが、自分の中学時代と比べてもそのあまりの幼稚さに閉口する。
あれで大人になんてなれるのだろうかと心配してみて、そのあまりに自分らしくない教師振りに嫌気がさした。
仕事のことなど考えるのも鬱になって、なんとなく手元のプリンに手をかけた。
ペリリッと蓋をはがしてみて、一瞬手を止める。

「.............まさかな。」

子供のいうことを真に受けて身構えるなんて疲れている証拠だと苦笑して、プリンにスプーンを差し込もうとした瞬間、部屋に呼び鈴の音が響いた。


ピンポ〜ン


「YA−!HA−!!クリームぶっかけにきましたーっ!!」
「......は?」


呼び鈴の音に振り向いたその先には、白いミニワンピースを着たとんがり耳の金髪が、大きなガラスボールを抱えて立っていた。
ドアの鍵を開けるどころか玄関に近寄ってもいないのに、その人物はどうやって部屋に入ってきたのかとムサシはいぶかしむ。

「お前誰だ?......どっから入ってきた?鍵閉め忘れてたか?」
「どうでもいいだろ、とにかくプリン貸せよ。そこにぶっかけなきゃなんねぇんだから。」

そう言うと、不信人物はムサシに近寄った。
そしてムサシの手元にあるプリンに、ガラスボールの中からクリームを注ごうとしゃがみ込んだ。
クリームの甘い匂いと、間近にある白く綺麗な顔にムサシの鼓動が1つ脈打つ。
慌てて視線を顔から逸らすと、次に目に付いたのは下着が見えそうなくらいにギリギリまで捲くれあがったスカートのすそから伸びる細くしなやかな足だった。
ムサシの手が自然とその白い太腿に伸びる。

「なっ!!何しやがるっ!!」

ゴンッ!?

「痛ぇ......。」

相手は触られた途端に、手に持っていたガラスボールでムサシの頭を殴りつけた。
今まで横にあった生足は立ち上がり、華奢な身体を支えて後ずさる。

「だってお前あれだろ?どっかの馬鹿が呼んだデリヘルかなんかじゃないのか?部屋間違えてるぞ。」
「このっ...糞ヒゲェ!!高尚なプリンの精、ヒル魔様を捕まえてデリヘルだぁっ!?」

耳先を真っ赤にしながら怒るその顔も綺麗で、ムサシは思わず見惚れてしまいそうになる。

「ヒル魔って名前なのか。で、いくらなんだ?気に入ったから今日は俺に買われておけよ。」
「っ!?............ふ・ざ・け・ん・なぁぁあっ!!」

怒声とともに、ヒル魔の姿は消えてなくなった。
後に残された甘いクリームの残り香の中、ムサシは呆然とする。

「......マジで?ちょっ、ええええっ!!本気でプリンの精?.......嘘だろ。」

机の上には蓋を開けたままのプリンが虚しく乾き始めていた。
ムサシは知らない。
プリンの精は、召喚された相手のプリンにクリームを注ぐまで、プリンの国に帰れないことを。
そして、この後どうしたものかとガラスボールを抱えて途方にくれるヒル魔が実は玄関のすぐ外にいることを。

ムサシはまだ知らない。


<3>


あまりの出来事にしばらく放心状態だったムサシの耳にインターホンの音が届く。
まさかまた後ろにヒル魔が現れたのかと慌てて振り向くが、今回は誰もいない。
再度インターホンが鳴らされる。
返事のないムサシに痺れを切らしたのか、来訪者はドンドンとドアを叩き始めた。

「はいはい、今開けるからそんなに叩くなよ。」

いったい誰だとムサシがドアを開けた先には制服の警官が立っている。
ムサシは自分の生徒が何かやらしたのかと、問題を起こしそうな子供の顔を思い浮かべた。
そんなムサシに警官が声をかける。

「あのねぇ。いくら痴話喧嘩したからって、可愛い彼女をこんな格好で外に放り出しちゃ危ないよ。」
「は?彼女???」

何のことだとムサシの口が開く前に、警官はガラスボールを抱えたヒル魔を押し出してきた。
ヒル魔は困ったように顔を逸らして何も言わない。
ムサシも驚いてしまって何も言えない。

「もう喧嘩しちゃだめだよ。」

そんな二人を見て、警官は苦笑いしながら去っていった。
いつまでも玄関先で突っ立ているわけにもいかず、ムサシはとりあえずヒル魔を部屋へ迎え入れた。

「..........なんで警官が連れて来るんだよ。」
「知らねぇ、外で座ってたら声かけられた。」
「何で外で座ってんだよ、帰ればいいだろうが。」
「.............。」

ムサシの言葉にヒル魔は黙り込んで、抱えたガラスボールを見つめる。
そして、はっとしたように顔を上げてムサシに詰め寄った。

「そうだっ!!テメェさっきのプリンはどこやった?」
「はぁ?プリンだったら捨てた。」
「なっ...捨てただぁぁぁっ!!!何してんだテメェっ、この糞ジジイがぁぁっ!!」

ヒル魔のあまりの剣幕にムサシは目を丸くする。
たかがプリンを捨てたくらいで何故そんなに怒られなければならないのかが、ムサシにはさっぱりわからなかった。
そんなムサシの態度が気に入らなかったのか、それともただ激昂しただけなのか、とにかくヒル魔は怒り狂ってムサシにガラスボウルを振り上げる。

「うわっ!!あぶなっ...」

ムサシが慌ててヒル魔の動きを止めようとした瞬間、ヒル魔はバランスを崩してその身にクリームをぶちまけた。

「..........。」
「...おい、大丈夫か?......おーい...」

ムサシの呼びかけにも反応できずに、ヒル魔は呆然と座り込んだ。
ムサシは用心しながらヒル魔に近寄る。

「......のせいだ。」
「何?」
「全部テメェのせいだぁぁぁっ!!!」
「ちょっ、いきなり暴れるなっ...」

暴れて掴みかかってくるヒル魔をムサシは易々と取り押さえる。
ムサシに組み敷かれても、ヒル魔はまだ暴れるのをやめないでいた。

「離しやがれっ!!」
「離したら暴れるだろうがっ!!」
「うるせぇっ!!テメェのせいでこっちはプリンの国に帰れなくなってんだよ!!」
「はぁ?またそんな夢物語かよ。ああ、それともそういう店の名前なのか。ありそうだな、そういうの。」

さっき2度目のインターホンがなるまで、ムサシは一瞬ヒル魔の言葉を信じかけていた。
しかしさっき警察官に連れられてきたことで、やはりどこかの風俗女だと至極現実的に理解しなおしていた。
目の前から消えたような気になってしまったが、たぶん自分の思い違いで目の錯覚か何かだったのだろうと自分を納得させていた。
そんなムサシに対して、ヒル魔がどんなに騒いだところでわかってもらえるはずもなく、ヒル魔の言葉はむなしく消えていく。

「で、帰らなかったってことは買われても良いって事だよな?」
「へ?何言って.....っ!!」

ヒル魔は武蔵の言っていることが理解できずに、思わず体の動きが止まる。
それを肯定と取ったムサシはヒル魔の顔についたクリームを舐め上げた。

「......っわーーー!!何すんだっ!!!」
「何ってナニ。お前の仕事だろ?ちゃんとしなきゃ店に帰れないから外にいたんだろ?」
「そうだけどそうじゃねぇぇぇっ!!!」

ヒル魔はムサシから逃げようと必死でもがく。
頑張ってもがけばもがくほど、皮肉にもスカートはめくりあがって白い足を晒す。
ムサシのほうはヒル魔の態度も抵抗も、全てが演技だと決め付けていた。

「ちょっと...やめっ.......んうっ!!」

ムサシは自分の口でヒル魔の口を塞ぎ、手をスカートの中へと忍ばせる。
これだけやせていれば仕方ないかと思いながら、ムサシはやけに薄い胸をまさぐって、そして見つけた小さな粒を弄り始めた。

「んんっふ...んっ」

口付けはさらに深くなり、ヒル魔の舌が逃げても逃げてもムサシは執拗に追いかける。
ヒル魔が少しでも顔を逸らそうとすると、胸の突起を強く捻った。
そうするとヒル魔の体は跳ね上がって、封じられた声の変わりに甘い鼻息をもらす。
ムサシは指の間で硬くなる小さな粒を感じながら、ヒル魔の口腔内を犯すことに専念していた。
そんな時、ムサシは自分の下腹部に当たる物体に気付いて手を伸ばす。

「......んっ...ぁ......やぁっ!?」
「...お前、女じゃないのかよ?」
「もうっ...そこっ...離せっぇ」

ムサシは手に握り締めたヒル魔の急所に刺激を与えながら考える。
ヒル魔が男だったことはいささか不満ではあったが、この行為をやめるほどの理由にはならない。
そのくらいに今腕の中にいるヒル魔は可愛らしくて卑猥だった。

「男って濡れねぇよな。」
「な...に、言って...?」
「ちょうどいいか、これ使えば。」
「えっ...やっ、ちょっと...やだっやめろっ...ひぅっ」

ムサシはヒル魔の腰を深く折って、その尻を剥き出しにした。
そしてそばに転がっていたガラスボウルを手に取ると、その残った中身をまだ触れていない後孔へとかけ始める。

「ひあっ...いやっぁあ」

ムサシの指がクリームのぬめりに助けられながら、ヒル魔の体内に入り込む。
必死に異物を押し出そうとする内壁を、ムサシは宥めるように指を動かしていく。
ジュプジュプという音と共に、甘ったるい匂いとヒル魔の嬌声がムサシの部屋に響いた。

「......んぁ...ん、...やっ、もうっ...や...だ」
「俺ももう限界。ちょっとキツいかもしれんがまぁいいよな。」
「???ひっ...やあぁぁぁっ......はっ...」

ムサシはあくまでヒル魔のことを風俗商売と思い込んでいた。
少しくらいきつくても慣れているだろうと、埋め込んでいた指を開いてその隙間から無造作に自分の雄を突き立てる。

「...ぁ...はっ......ひぁっ」
「結構...締まるな......」
「やっ...動くっなぁ...やだっ...もっやぁぁ...んぅ」

すぐにまともな言葉は紡げなくなり、ヒル魔の口からは乱れた呼吸と喘ぎに支配される。
ヒル魔の悲鳴など気にせず、ムサシは腰を好きに進めてその快感を引き出そうとする。
そして自分の淫熱が吐き出されるまで、ヒル魔の体を貪り尽すのだった。



<4>



全てが終わったムサシは、ヒル魔が黙ってその身を整えるのを見つめている。
最後に、転がったガラスボウルを抱えてヒル魔の身支度は完成したようだった。
背を向けて黙ったまま座り込むヒル魔に、ムサシから声をかけた。

「なぁ、お前いくらなんだ?」
「...........。」
「金払ってもらわなきゃ帰れないんだろう?ほら、こっち向けよ。」

ムサシは無理矢理ヒル魔を振り向かせる。
そしてその瞳に滲む涙に気付いて驚き固まった。

「何で泣いてるんだ?」
「......テメェ、まだ信じてねぇだろうがっ......金なんか払ってもらっても帰れねぇんだよっ!!」
「.........?じゃぁどうやったら帰れるんだよ。本当の客んとこでもいくのか?」
「だからっ、初めから言ってるだろうが。テメェのプリンにクリームかけなきゃ帰れねぇんだよ......。」

ヒル魔はしょんぼりと俯いて、空になったガラスボウルを見つめる。
かけてあげるはずのプリンは捨てられて、しかも今ではかけるクリームすらなくなっていた。
そんなヒル魔を見ながらムサシはまさかと思う。

「お前、まさか本当に本気でプリンの精なんていうんじゃないだろうな?」
「っ!?.........もういい。信じないならそれでいい。もう行く。」
「行くってどこに?」
「..........うるせぇっ、ほっとけよ。」

ムサシは立ち上がりかけるヒル魔を引き寄せた。

「まだ信じたわけじゃないけどな、行くとこないならここにいれば?」
「........っ、何で?いいのかよ、わけわかんねぇくせに。」

ヒル魔はムサシの意外な言葉に動揺するのを悟られたくなくて、そっぽを向きながら答えた。
そんなヒル魔に苦笑しながら、ムサシがさらにヒル魔を引き寄せ抱きしめる。

「確かによくわからんが、ヒル魔のことは気に入った。」
「ばっかじゃねぇの。まぁ、よく考えてみたら全部テメェのせいだしな。よし、今日から俺の世話をさせてやる。しっかり励みやがれ。」

先ほどとは打って変わって急に強気になるヒル魔の態度が少し癪に障ったムサシは不敵な笑いを浮かべてにじり寄る。

「わかった、しっかり励まさせてもらうから覚悟しとけよ。」
「は?まさかテメェ......またあんなことをオレにしようってんじゃないだろうなっ!!」
「面倒見てやるんだ、当然だろう。体で払え。」
「.......この......糞エロジジィッ!?」

ヒル魔は腰にまとわりつくムサシに蹴りを入れながら、必死で逃げようとする。
そんなヒル魔を笑いながら、ムサシは生徒の言葉を思い出していた。


『プリンの精を掴まえるには、そのクリームを使い切るかプリンにかけさせないことなんだってさ。』


いまだに完全に信じたわけではないが、ムサシはなるほどと納得する。
図らずも、掴まえてしまったプリンの精との今後がどうなるのかはわからない。
しかしもし、まかり間違ってこの腕の中のプリンの精がまた誰かに呼び出されでもしたらと思うと妙にイラつく。
とりあえずは明日、学校へ行ったら馬鹿騒ぎする男子生徒にプリン禁止令でも出しておくかと心に決めた。

そしてムサシがそんなことを考えているとは知らずに、腕の中で嫌がり暴れるヒル魔とのじゃれあいはまだまだ続くのだった。