繋熱

<守り人>


アメリカンフットボールチームにおいてQBに位置する人間はその手や指をとても大切に扱うという。
きっと普段はヒル魔も細心の注意を払って自分の大切な武器を守っているに違いない。
PCをいじる時にも、簡単に軽快にキーボードを打っているように見えて、指先を無意識に庇いながら傷つかないよう打ちこむ術を持っているのだろう。
それなのにどうしてこういう時だけは全くといってよいほど気を使おうとしないのだろうか。
気を使うどころかむしろ平気で自傷行為に走ろうとするヒル魔にムサシは軽く顔を曇らせる。

「おい、手ぇ噛もうとするなっ」
「うるっさ……あっ………んはっ………」

きっと声が漏れるのが恥ずかしいのだろうとは思いながら、無理矢理その口から手を引き剥がす。
ヒル魔を抱えこんでその身体を揺さぶりながらムサシは頭を悩ませる。こういった行為が嫌いなわけではないし、年頃的にいったらむしろ2人とももっとがっつきたい。
しかしその為にヒル魔の手を犠牲にして良いかというと、もちろんダメに決まっている。

「あぁっ……はっ…やぁっ、ム…サシィ……」

行為に熱中すると、ヒル魔はまたその指を口元へ持っていきそうになる。

「だっから……お前のその歯は危ないって……言っているだろうっ!!」
「ひぁっ………んんっ……んっ…だっ…て、無っ理ぃ……声っいやぁ……」

ヒル魔がムサシの下で手を離せと暴れ出す。
仕方なくムサシはその口に自分の唇を寄せて声が漏れないよう塞いでやる。両手は指を絡めて固く握り締める。
無理な体勢はお互い様で、満足に動く事が出来なくなるけれど、それでもヒル魔の手を守れるのであればとムサシは腰だけを使い接合を深めていく。

「っ………んっふ………ぐぅ……んっ、んっ……んあっ!!」
「………っくぅ……」




<守られ人>


2人同時に果てるこの瞬間がヒル魔は堪らなく好きだった。
その時に固く結ばれた手が二度と離れないようにと強く願う。
一度は離れていったこの手が、また自分を捕まえてくれている安心感にずっと浸かっていたくなる。
ムサシはヒル魔が声を出すのが恥ずかしいから手や指を噛もうとするのだと思っている。
でも本当はムサシにだけなら声なんていくら聞かれたって構わない。
ただ、こうするといつもムサシが手を握って唇を合わせてくれるから、そうして欲しくてわざと噛もうとしてしまう。
手も唇もあの部分も身体の全てが繋がれて、お互いの熱がそこかしこから交じり合う。
この心地よさを得るためなら多少の傷なんてと少しだけ思ってしまう。
それだけでなく、ムサシが例えヒル魔自身であってもヒル魔を傷つける事は許さないとわかっているので、きっと止めてくれるだろうという甘えが自分にはあるのだと感じて思わず笑ってしまう。

「?…何が可笑しいんだ?」
「いや、別に。てめぇも耄碌したもんだと思ってな。糞ジジイ。」
「はぁ?どこが。」
「腰、かなりきてんだろう?もっと鍛えておきやがれっ!!」
「ったく、誰のせいだと思ってんだ………」

そう言ってムサシは腰を捩ってストレッチを始める。
その姿を眺めながらヒル魔は自分の掌に残る温もりを握り締めた。
この熱が少しでも長く残るようにと願いを込めて。