恋熱

グルグルグルグルグルグルグルグル
世界が回る何十倍もの速さで視界が歪む。
グルグルグルグルグルグルグルグル

「あー、糞っ………」

せっかく来たのに部室には誰も居なくてヒル魔は重だるい身体をベンチに横たえる。
よくよく考えると昨日今日アメリカ合宿から帰ったばかりで、どうせみんなへばっていたし、たまには休息も必要だとかなんとか言って部活は休みにしておいたのだった。

「………っ、時差ボケでも起こしたか?情けねぇ……」

身体はどんどんと重くなり、以前から感じていた眩暈はいっこうに治まらないどころか酷くなるばかりだった。
この暑い中、クーラーもつけていないし、このままここに居ては熱射病で動けなくなるかもなと呑気に目をつぶるヒル魔であった。

「一人で何してんだ?」
「……?………おう、元気だったか、糞ジジイ」

唐突の訪問者に閉じていたいと駄々をこねるまぶたを無理矢理こじ開ける。
一ヶ月以上ぶりに瞳に映ったヒゲ面は想像していたとおり日に焼けていて、きっと触ったら気持ち悪いくらいに汗ばんで熱いだろうなとヒル魔の頭はどうでもいい事を考える。

「まだまだ暑いんだからクーラーくらいつけて寝ろっ。」
「…………焼けたな、ムサシ。」
「ヒル魔?………お前熱あるだろ。」
「………?」

お互いの言葉が全く噛み合わなくて上手く頭で処理できないヒル魔をよそに、いつの間にかムサシがすぐ傍まできていた。
ヒル魔の顔に乱暴に触れてくるムサシの手が意外と乾いていて冷たい事に驚く。
その手の気持ち良さに振り払わないでいると今度は顔が近づいてくる。

「………何だよ?ただの時差ボケだ、熱なんかねぇよっ!!」

ヒル魔は久しぶりに見るムサシのアップに照れくさくなって顔を反らそうとしたが、それは感嘆にオ輪得られて額を付き合わされた。

「何が時差ボケだっ!!きっちり熱出てるぞ。」
「……………んー?」

言われてみれば確かに身体は熱く、汗ばんでいたのは自分の方かと自覚する。

「あぁ……、そうか……熱か、どうりで目が回る。」

そう言って胸元に手を突っ込み首筋へと汗を拭うヒル魔の姿はとても男とは思えない程の色気を放ちムサシを誘う。
潤んだ瞳にいつもの険しさは無く、少し赤くなった目元と浅く荒い呼吸にムサシはため息をつく。

「おい、ヒル魔。動けるか?とっとと帰って養生しろ!!そんな無防備にしているとどうなっても知らんぞ!!」
「………どうなっても…ねぇ。……ちょっとムサシ、こっち来てみろ。」
「なんだ、いったい…っ!!」

ヒル魔が苦しそうな声で呼ぶから、もしかして声を出すのも辛いのかとその口元に顔を持っていく。
次の瞬間、細く白い腕に頭を抱きこまれて唇を奪われる。
いつもは少し冷たいくらいのその唇も今日ばかりは熱く、ムサシの口に挿しこまれる舌は火傷しそうなくらいの熱を伝えてくる。

「………お前、人の話聞いてたか?」
「こんなもん、汗かきゃ一発で治るだろ。汗かかせろよ、糞ジジイ」

残暑厳しい真昼間に誰も居ない部室で誘ってくるこの淫魔に逆らえるわけも無くムサシはまた唇を合わせてその細い腰を抱きしめる。

「んっ……はぁ…………あっ……」

熱に浮かされ、初めからほとんど理性など残っていなかったヒル魔は少し触れられただけで声を漏らす。
胸の先はすでに起ち上がり、早く苛めてとムサシを誘惑してくる。
舐めあげると少ししょっぱく汗の味がした。
舌で転がし甘く噛んでやるたびにその口からは吐息と喘ぐ声がもれ出てムサシを刺激する。

「良い反応だな、ヒル魔。随分と溜めてたのか?」
「……あっ…はぁ………やる暇っなんて、あるかっ!!」
「………………デスマーチか……」

ムサシはアメフトから離れている現実を突きつけられた気がして、少しヒル魔が憎らしくなった。
だから思わず意地悪くヒル魔を嬲ってみる。
まだいくらも緩んでいないヒル魔の後ろにいきなり2本揃えて指を突き入れる。

「ひっ!!いった……あぁ………んぁっ…あっ!!」

ヒル魔がムサシの指を受け入れるまで待つこともせずに、乱暴に指を動かし始めた。
特に体内の小さなしこりは念入りに引っかいては押しつけヒル魔の射精を早急に促す。

「……ひっ、くぅ……んっ…やぁっ!!……あっ……」
「なんだ、まだイキ足りないのか?」
「あっ……まだ、だっ……」
「……この淫乱ッ」
「ああっん、んッ……んあっ……あっ…はっ……」

いつのまにかほぐされた孔はムサシの挿入を簡単に許していく。
熱のせいか、いつもより熱く絡みつく内壁に搾り取られないようムサシは必死に抵抗する。
置いて行かれた腹いせにヒル魔の弱い所ばかりを攻めたてて、ギリギリの所でわざと外す。そんなムサシに弄られて、熱に浮かされたヒル魔は縋りついて懇願する。

「やっ………そこッ違……あっ…とめんッなぁ……」
「……っ汗、かきたいっつったの自分だろっ……手伝ってやってるんだから我慢しろっ!!」
「ふあぁっ……むさしっ…むさっ…………んやぁ……」

ヒル魔が意識を手放してもまだムサシはまだヒル魔を抱えて離そうとはしなかった。
そうして次の日の朝、ヒル魔が目覚めるとそこにムサシの姿は無く、無造作に掛けられたタオルケットを引き剥がしたその下にある、綺麗に整えられた自分の様子に苦笑をもらす。
熱はすっかり下がったようで身体も軽さを取り戻していた。
眩暈はまだ少し残っていたが、いずれ消えるだろうと天井から目をそらす。
眩暈の本当の原因はもう手の届く所にあるのだから。