まだ梅雨入り前だというのに連日降り続く雨がヒル魔に隙を作らせたのかもしれない。
カレンダーの日付は5月20日を指している。
GW明けの重だるい身体へ纏わりつくような湿気に、ヒル魔は嫌気が差していた。
今日のアメフト練習は諦め、しつこく振り続ける雨の音に苛立ちながらヒル魔はメンバー全員を部室から叩き出した。
一人になってほっとしたのもつかの間、アメフトが頭から離れずいつの間にか外国チームの試合や他校の研究材料用のビデオをデッキに突っ込んでいた。
画面の中では見知ったユニフォームの集団が1つのボールを取り合い、プレイが決まるたびに観客からは歓声が上がる。
「糞ッ!こんくらいの試合運びで負けてんじゃねぇよ。」
ヒル魔は画面に向かって小さく呟く。
これがデビルバッツだったら、司令塔が自分であったらと、頭の中で検算していく。
体を動かせない気晴らしにと見始めたビデオだったが集中力はすぐに途切れ、練習の出来ない不満が余計に自分の中で積もっていくのをヒル魔は感じていた。
しかしどんなにイラついたところで、この部屋にはヒル魔以外誰一人いないからどうにもストレスを発散する場所がない。
仕方なく手当たり次第にビデオや雑誌、作戦資料などを適当に漁っていく。
程無くして机の上は思い切り荒らされ、自らがしでかした事とはいえ、そのあまりの汚さにヒル魔は絶句した。
今更一人で片付ける気もおきず、長椅子に座り込み机の端に頬杖をついてテレビに目をやる。
すると画面の中に映し出されていた試合映像が、急に乱れて一瞬砂嵐に変わった。
次の瞬間、画面に映し出された映像にヒルマは凍りつく。
先ほどまでの健全な画とは打って変わり、四角く薄い機械の中では淫蕩な映像が延々と流れ始めた。
卑猥な音がスピーカーを通り抜けてこちら側の空気を震わせている。
「あの糞ジジィ・・・何てもんの上に撮ってやがんだ。」
ヒル魔は録画をさせた相手を思い出し、苦々しそうに言葉を吐き出した。
画面の中では華奢な身体つきの女が男に組み敷かれ犯されていく。
こんな女が好みなのかと、画面を睨みつけるヒル魔の表情は更に硬くなっていった。
取り立てて観たいわけではなかったが、なんとなく目が離せないから仕方なく見続ける。
ヒル魔もれっきとした男の子で、こういった類のビデオを見なかったわけではない。
ただ、ムサシとそういう関係になってからは、犯される女が自分と重なるようで敬遠していた。
今も性的な興奮や異性への興味は不思議と湧かず、ただ画面の中の女を凝視している。
女が喘ぎながら股を濡らして腰を振る姿に、ヒル魔は苛立ちさえ覚える。
たかがAVを観ているだけで、なぜこんなにも神経を逆撫でされるのか分からず、胸の痞えは余計に募る。
意味の不透明な感情に振り回される自分を馬鹿馬鹿しく思ったヒル魔は、リモコンを捜して手をかけた。
ヒル魔がOFFボタンを押すのとほぼ同時に、背後のドアがガチャリと開く。
思わず飛び上がるようにして振り返った視線の先には、くだらないビデオの元持ち主が立っていた。
「お前一人で何してんだよ、他の奴らは?」
「っうるせぇ糞ジジィ!!今日は休みだ休み。とっとと帰りやがれっ!?」
「なんで切れられなきゃなんねぇんだよ。・・・・・・って、お前大丈夫か?顔赤いぞ。」
ムサシに指摘されるまでもなく、ヒル魔は自分の激しい動悸と顔の火照りに気付いていた。
このヒゲ面の男はいつからドアの向こうにいたのかと考えると、その顔はさらに朱色に染まる。
別に観たくて観たわけではなかったが、健全な男子高校生がAVを見る理由など普通は1つしかない。
つまり自慰行為を行うために使用する道具としてというのが一般的である。
そしてそれは本来隠して然るべき行為でもあった。
もちろんヒル魔にそんなつもりは毛頭無かったが、この状況は誰がどこから見ても一人でAV鑑賞していたという風にしかとられないだろう。
幸い相手の反応からして、たぶんまだデッキの中身には気付かれていない。
今すぐにムサシを追い出して、秘密がバレる前に証拠隠滅を図りたいヒル魔であった。
「オレは今すんげぇ機嫌悪ぃんだっ!!分かったらとっとと出て行けっ」
「なんだ、その言い草。言われなくても出て行くさ。忘れもん取りに来ただけだしな。」
ヒル魔に突然わけもわからず怒鳴られて、ムサシはかなり不機嫌になった。
そして目的のものを手に入れるために、ヒル魔を押し退けようとした。
しかし当のヒル魔は頑として譲らず、無言でムサシを睨みつけている。
「あのなぁヒル魔。俺お前に何かしたか?」
「黙って帰れッ!!」
「忘れものっつっただろうがっ!机の上においてた本取ったら帰るから退けよ。」
「そこはさっき俺が散らかしたから簡単には見つかんねぇ。明日にしろ。」
何を言っているんだと、ムサシはヒル魔の背後に目をやりその惨状にあきれ返った。
ヒル魔の言葉通り、机の上はぐちゃぐちゃで目的の雑誌は簡単に見つけられそうにない。
どうしたものかと立ち尽くすムサシの胸に手をついたヒル魔が、その体を無理矢理外へと押し出そうとする。
「ちょっ!!危ねぇな、おいっ!?」
「もう分かっただろうが。か〜え〜り〜や〜が〜れ〜。」
「何ムキになってんだ?すげぇ怪しいぞ、ヒル魔っ」
「出てけーーーっ」
「いいかげんにしろっ!」
さすがにヒル魔の様子がおかしいと気付いたムサシは反撃に出た。
互いに揉み合ううちにヒル魔の身体が机に触れ、その上に築かれた小山の一角が形を崩す。
その中には運悪く例のリモコンが含まれており、ガシャンと床に落ちた。
同時にテレビがブツンという音を立てて明かりを点し、再度あの画面を映し出す。
背後から流れてくる高い啼き声に、ヒル魔の身体は強張り全身の血の気を引かせた。
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
ヒル魔の背後にテレビがあるということは、向き合ったムサシに画面が丸見えということでもあった。
ムサシはヒル魔の両手を掴んだまま、その後ろにある画面を凝視する。
映像に映る女は今もまだ犯されながら腰を振っている。
行為の最中に生じる粘着音と悲鳴にも似た嬌声が室内に流れ出していく。
「お前ホントに何してんだ?」
「違うぞッ!!アレはテメェが持ってきた奴だろうがっ!!あんなのの上に試合録画しやがって、この変態ッ!!」
「で、今までこれ一人で観てたってのか?」
顔どころか体中真っ赤になって狼狽するヒル魔を見ながら、ムサシは口端を引きあげた。
そして力技でテレビに向かってヒル魔を椅子に座らせ、その隣に自分も腰を下ろした。
もちろんヒル魔がそんなことを大人しく許すはずもなく、暴れて席を立とうとするからその耳元に囁きかける。
「一緒に観たらいいじゃねぇか。それとも今すでにアレで、独りになりたい?」
「ざけんなっ!!」
暗に自己処理したいのかとムサシに笑われ、ヒル魔は浮かせた腰を仕方なく椅子へと押し付けた。
そんなヒル魔の態度にムサシは満足げに笑うと、顔を画面に向けて鑑賞し始める。
ヒル魔は座ったものの、ムサシに知られた羞恥とその居心地の悪さにそっぽを向いて耐えていた。
そんなヒル魔の胸のうちを知ってか知らずか、画面から眼を離さずにムサシが唐突に口を開く。
「ああ、これ思い出した。この女お前に似てんだよ。」
「はぁ?んなもんばっか観てっからとうとう頭腐ったか。」
「ホントだって。ほら、胸無いとことかあのきっつい目とか。」
「・・・・・・・・・・・・マジぶっ殺されてぇのか?」
どんな顔をしてそんなくだらないことを言っているのかと、ヒル魔は盗み見るように視線を上げた。
てっきりビデオを観ていると思ったムサシの顔はヒル魔に向けられていて、かち合った視線に慌てて目を逸らす。
ヒル魔はこめかみの辺りで拍動する脈に頭痛を覚えながら視線を彷徨わせた。
そんなヒル魔の顎をムサシが掴んで力任せに画面へと向けさせ固定する。
「ほら、あの顔なんかイクの時のお前そっくりだぜ。」
「なっ!!いった・・・・・・・離せっ!!」
ヒル魔がどんなにもがいても、ムサシは手の力を緩めようとしない。
無理矢理に見せ付けられた女の顔は、泣き出しそうに歪みながら快楽を甘受している。
平然と、これがいつもの自分の顔だと言われて羞恥で顔が染まる。
ヒル魔は悔しくて動かせない顔の代わりに眼球だけでムサシを睨みあげた。
その視線に気づいたムサシが薄笑いを浮かべてまた囁く。
「何見てんの、やりたくなった?」
「だれがっ!!この手ぇ離しやがれ!!」
「今ここでやるのか?俺は別にいいぜ、付き合ってやるよ。」
「日本語も理解できねぇのか、この糞ジジィ!?」
ムサシのからかいに憤慨したヒル魔は、この男に何とか一矢報いようともがいた。
そんなヒル魔の両腕を、ムサシは解いた自分のネクタイで後ろ手に縛り上げる。
ヒル魔がどんなに精一杯抵抗しても、体格の差はこういうとき如実に現れるから腹が立つ。
しかもムサシはついこの前まで大工という力仕事で身体を鍛え上げていたのだから、本気を出せばヒル魔など簡単に征服してしまう。
「何縛ってんだっ!!さっさと解きやがれッ!!」
「もう我慢できないのかよ、そんなに溜まってんの?」
「人の話を聞けー!!」
「あー、俺あれやりてぇ。」
「は?」
全く話を聞かないムサシの態度にヒル魔は本気で怒鳴りながら、ムサシが指差す方向へと眼を向けた。
そこには獣のように這い蹲って尻だけ高く突き上げた女と、それにしゃぶり付く男が映し出されている。
ヒル魔の目は点になり、何を要求されているのかを理解できないでいた。
その一瞬の隙を突いて、ムサシはヒル魔の頭を机へと押し付ける。
そしてそのまま細腰を持ち上げ両膝を開き、間に自分の身体を跨がせるようにして長椅子へと乗せた。
まさに画面の中で喘ぐ女と同じ姿勢をとらされて、ヒル魔は本気で抗議の声を上げる。
「てっめぇ・・・いい加減にしやがれ!!」
「好い加減にしてやるから暴れんな。」
「そーじゃねぇぇっ!!」
ムサシはヒル魔の絶叫を軽くかわしながら、目の前のズボンに手をかけ下着ごと一気に引き下ろした。
突然外気に触れた白い尻は、キュウッと引き締まってムサシの目を楽しませる。
嫌だ止めろと喚くヒル魔をよそに、ムサシはその白い尻に手をかけた。
ムサシは自分と同じ男とは思えない程に滑らかでしっとりとした感触を掌で楽しみながら、その割れ目を大きく押し開く。
白い肉を掻き分け晒された窄まりは、緊張してもっと小さく口を閉じようと蠢く。
「すげぇ、もうひくいてるぞ。」
「いやだっ!!ひっ・・・・・・ぅ、この糞変態ぃ・・・・・・舐めッな・・・」
生暖かく濡れた舌が、堅く閉ざした後孔に這わされる。
ムサシはゆっくりねっとりと孔周辺全てを丁寧に舐めとり、刺激に震える感触を舌で楽しむ。
手は孔の下に並んだ二つの珠を器用にも揉みしだいていく。
罵声を浴びせていたヒル魔の口からは徐々に艶めいた吐息が漏れだし、時に鼻を抜けた甘い声を上げた。
「んっ・・・ふ・・・・・・ひあっぁ・・・」
堅かった入り口は次第に解され、ムサシは緩くなった襞を押し広げるように舌先を突き立てる。
すると内壁はすぐに収縮して異物を押し出そうとするから、それを宥めるようにムサシは入り口を吸い上げた。
吸い疲れる感覚に、ヒル魔の背は弓なり内腿が震える。
しつこいくらいに口先での愛撫を与えながらムサシは頃合を見計い、パクつきだした後孔へと指を捻じ込んだ。
「やぁっ!!・・・・・・んぁ・・・はっ・・・はひっぃ、抜ぅけっ・・・ゆ、び・・・ひぃ」
この期に及んでまだ抵抗する様子を見せるヒル魔を服従させようと、ムサシの指が柔らかい内壁で何かを探り始める。
一本だった指は二本に増え、入り口近くの浅い所で胡桃大のしこりを見つけた。
グリッとその場所に指先を押し込むたびに、ヒル魔の口からは嬌声が漏れ、腰が妖しく揺れる姿はまさに画面の中の女そのものだった。
まだ一度も触れていない幹の先からは、粘ついた透明な液が先走り、その頭をぬらぬらと光らせる。
「ひっ・・・く、ぁふ・・・・・・ムサッ・・・・・・」
「前こんなにベトベトにして、後ろがそんなに気持ちいいのか?」
「・・・・・・・・・っ」
ムサシの言葉は悶え喘ぐヒル魔の意識を現実へと引き戻すから、唾液に濡れた唇をかみ締め反抗の意味をこめて頭を左右に振りかぶる。
どんなに快楽に溺れていても、最後の最後で膝をつこうとしないヒル魔の姿を好ましく思いながら、ムサシはヒル魔の内壁の中でも一番敏感な箇所に爪を立て抉る。
「ぃあっ!!・・・・・・っつぅ・・・ひぐっ」
「その強情さ加減は結構くるけど、そろそろおねだりすることがあるだろう?」
「・・・・・・・・・・・・ぅう、はっ・・・ゃ、だ・・・・・・も、やめ、ふぐっ・・・」
「ほら、我慢したってもうこんなんじゃ満足できないだろ、お前本当はどうしたいんだ?」
「・・・・・・・・・・・・・ゃ・・・いゃあ・・・ひっく」
これだけ刺激を与え続けているのに、今日のヒル魔はいつにも増して強情を張っている。
ムサシにはその理由がわからず、ヒル魔の心が折れるまで弱い部分ばかりを攻め続けた。
たった一言、ムサシが欲しいというその一言さえ吐き出せば楽になれることを知りながら、
どうしても言葉が口から出て行かない。
ムサシとの性交に慣れた身体はもっと深い刺激を知っているから、中途半端な愛撫では達しきれずにただ芯を疼かせる。
胎内に留まる出口の見つからない欲望を抱えてヒル魔は涙をこぼした。
「ムサッ・・・も、やめッ・・・」
「ここまで来てまだ嫌がるなんて、珍しいな。何がそんなに嫌なんだ?」
「だっ・・・・・・て、女っみた・・・で、んっ・・・・・・カッコわり・・・・・・ぃ」
達き切れないもどかしさがヒル魔の口を軽くする。
ムサシはきっと、ヒル魔の知らないところで何人もの女と関係を結んでいる。
それを知っているからこそ、ヒル魔は自分が男であることに拘っていた。
例え他の女と同じ事をされていてもヒル魔が男である限り、ムサシの中で他の女と並ぶことはないと心の底で自分に思い込ませていた。
それなのに今日ムサシは画面の中で喘ぐ女を目の前に突きつけて、あれとヒル魔は同じだと言った。
同じではない、同じになどなりたくないと、叫び出したい気持ちを無理に飲み込みヒル魔は与えられる快楽に耐えている。
ムサシは自分のたわいない言葉にここまで敏感に反応するヒル魔に驚きながら、頬が緩むのを抑えられなかった。
「初めに言っとくけど、お前が悪いんだからな。」
「っ、・・・・・?」
嫌がる理由に満足したムサシは、ガクガクと震えるヒル魔の腰を支えながら、興奮した自分の棹をうっすら開いた入り口へと押し当てる。
全てが終わりヒル魔の正気が戻った時には、こっぴどく怒鳴って怒り狂われることをムサシは覚悟して、熱くて甘い果肉へと自らを埋め込んだ。