煽言 2

執拗に慣らされた入り口はムサシの堅い肉を簡単に飲み込んでいく。 本来、必要の無くなったものを体外へと押し出す働きをしている場所だけに、押し込まれる感覚が苦しくないといえば嘘になる。
しかしその苦しさも、ほんの少し我慢すれば途端に快楽へと変わり果てる事をヒル魔は既に知っていた。
案の定、先ほどまで異物を吐き出そうと動いていたはずの内壁は、中途半端に埋め込まれたムサシの形に慣れ始め、今度は逆に奥へ奥へと引きずり込む動きを見せる。

「んなに、がっつかなくてもいいだろ?」
「ひっ・・・・くぅ、奥っ入れ・・・なっ!!」

ヒル魔の身体が飲み込むよりも早く、ムサシはその身体の一部を押し入れ突き上げた。
反動でヒル魔の身体が机の上に散らばった雑誌やビデオの束を押し出していく。
ばさばさと音を立てて床へ落ちる紙の音に、後片付けが面倒なのにとヒル魔はその綺麗な眉を寄せる。
今自分を組み敷いている男は片付けなど手伝う気もないのだろうと思うと、それが腹立たしくて尻を引き絞るように力を入れた。

「っつぅ・・・ヒル魔っ、きっつ」
「ざま・・・みやがっ、れ・・・っ」

悔し紛れにムサシの雄を締め付けた代償は、もちろんヒル魔本人にも生々しい感触として返ってくる。
そんなヒル魔に追い討ちをかけるように、ムサシが激しく律動を始めた。
机上の資料は次々に床へと払い落とされていくが、今のヒル魔にそれを思いやる余裕は無い。
ムサシと深く結びついている感覚に耐えようと、ヒル魔は息を詰めて快楽の波をやり過ごすだけで精一杯だった。
ヒル魔の中でムサシが更に大きく膨れ上がる。
いつもより早いなとぼんやり考えながら、声を押し殺してその時をヒル魔は待った。

「・・・・・・っく、はっ・・・もっぃい加減に・・・」

予想に反してムサシの絶頂はなかなか訪れない。
体内で暴れる雄の大きさは、未だに堅く熱いままにヒル魔を追い立てていく。
早く終わらせろと、無理矢理に内壁を引き絞ってみてもムサシは声ひとつ漏らさない。
何かがおかしいと気付いたヒル魔は、無茶を承知で身体を捻ってムサシを見上げた。

「ふぁ・・・・・・あぅ、糞っ!!てめっ・・・・・・。」

振り返った先でヒル魔が見たものは、テレビ画面を見つめるムサシの姿だった。
そこに映し出されている映像を思い出したヒル魔は身体から血の気が引いていくのを感じた。
ヒル魔の中でついさっきまで何とか耐えていた射精感が急に萎え、ゴリゴリと内側から抉られる快感はただの圧迫感へと変化を遂げる。
急に反応の無くなったヒル魔の様子に、ムサシが声をかけた。

「・・・・・・ん、どうした?」
「・・・・・・・・・抜けよ。」
「は?だってまだいってないぞ。」
「るせぇ・・・さっさとどきやがれッ!!」
「ちょっ、マジ抜けるって、おいっ!!」

繋がれたまま暴れるヒル魔を押さえよう、ムサシは後ろから覆いかぶさる。
ムサシの雄が体内からズルリと抜けかける感触にヒル魔は思わず身震いして、その顔を机に押し付けた。

「糞っ・・・押し潰す気かよッ!!」
「お前が暴れるからだろ。何が気にいらねぇんだ?」
「こっちの台詞だっ!!テメェこそ、そんなに女が良いんなら・・・俺にこんなことしてんじゃねぇっ。」

SEXの時には自分を見ていて欲しいなどとヒル魔が思ったことはない。
それどころか自分の痴態が恥ずかしいから、出来れば目を瞑っていてもらいたいくらいだった。
けれどもだからといって、最中に他人の情事を映したビデオに目をやってもいいとは思わない。
そんな、気のないSEXを許すほどムサシとの関係に甘んじているわけではないから。
と、それはもちろん表向きで本当の理由はもっと女々しい。
ビデオを見ながらのSEXは少し快楽が強いただの自慰と変わらず、言外に女の代用品と言われているようで居た堪れない。
ヒル魔とのSEXの最中にも関わらず、ビデオに気を取られていたムサシの行為がヒル魔を酷く傷つけた。
暴れるヒル魔を気遣い、その身体を抱きしめているムサシの暖かい体温が更にヒル魔を惨めにさせていく。

「おいっ、ヒル魔・・・何泣いてんだよ。」
「泣いてねェッ!!」
「泣いてんだろうがっ。」
「テメェみてぇなクソ重い筋肉デブに乗っかられて苦しいんだよ!!・・・・・・もうどけよ。」

強く身体を押さえつけられ抵抗を諦めたヒル魔は、無自覚に滲んだ涙を止めるため気を静めようと息を吸い込んだ。
そうしてようやく互いの置かれた状況に改めて気が付く。
ヒル魔はムサシを拒絶しながらも、体内に抱きこんだ雄の状態にこのまま終われないことを覚悟した。

「・・・・・・好きに動いて、さっさと終わらせてくれ。女じゃなくて悪ぃけどな。」
「何言ってんだ?」

自分を犯したまま動こうとしないムサシに、ヒル魔は仕方なく自分から腰を揺すって先を促す。
両手を後で戒められたままなので上手くは動けない。
気持ち良さのかけらもなく、ただ引き攣れて痛いだけの内壁がどれだけムサシに快楽を与えられるのかは分からない。
それでも動かないよりはマシだろうと、ヒル魔はムサシの下で蠢き始めた。

「ちょっ、おいヒル魔ッ・・・、待てって!!」
「なン・・・だよ、仕方ねぇだろ。いいから、ビデオ見て女と犯ってる気分で終わっちまえよ。」
「勝手なこと言って・・・おい、動くなって!!」

ヒル魔の動きをムサシが再び封じる。
これ以上どうしろと言うのかと、ヒル魔はため息をついて顔を机にこすり付けた。
そんなヒル魔の顎を掴んでムサシが無理矢理振り返らせるから、せめて視線は合わせないようにと眼を瞑る。
自ら遮った視界の向こうで、ムサシのイラついた声が聞こえてきた。

「なんでお前とやってるのに、わざわざ女のこと想像しなきゃなんねぇんだ?」
「そうしたいからテメェはビデオ見てたんだろ。」
「はぁ?・・・・・・っいや、あれは違うって!!」
「何が・・・。いい加減本気でこの体勢辛いから終わらせろよ。」
「人の話し聞けって!!」

どうして犯されたままの姿勢でこんな痴話喧嘩じみたことをしなければならないのかと、ヒル魔はムサシを睨みつけようと眼を開いた。
そしてその眼に映るムサシの真剣な顔に驚き、沸きあがっていた怒気をそがれる。

「ビデオ見ながらやっちまったのは謝るっ。」
「別に謝ることじゃねぇだろ。オレは男だし、女みたいに興奮させらんねぇからな。」
「そうじゃなくって、・・・・・・その、あれだ。」
「別に気ぃ使わなくてもかまやしねぇぞ。どうせオレは女の代わりだろ。」

何かを言い淀むムサシの姿に、ヒル魔は薄ら笑いを浮かべながら心にも無いことを口にした。
その言葉にムサシは表情を強張らせていく。
これは気分を害した時の表情で、ヒル魔はどうしてムサシがそんな顔をしなければならないのかと眉を顰めた。
怒る権利があるのは自慰の道具に使われた自分のほうなのにとムサシを見つめる。

「俺は、ヒル魔とやってる時に女の代わりにした覚えはねぇ。」
「ビデオ見てたじゃねぇか。」
「だからあれは・・・・・・、ちょっと考えてたんだよ。」
「なにを?」
「その、あのAVのどこで抜けてたのかがわかんなくってよ。」
「・・・・・・?」

ムサシの言っていることがヒル魔にはよくわからない。
ヒル魔が無言で見つめる先で、ムサシの顔がどんどんと赤くなっていく。
何を赤面することがあるのかと首を傾げるヒル魔に向かって、ムサシは覚悟を決めて告白した。

「お前じゃなきゃ興奮しねぇんだよッ!!」
「へ?・・・・・・何言って、バッカじゃねぇの?バーカ、バーカッ!!」
「バカバカ言うなっ!!」
「うるせぇっ、糞ジジイ・・・・・・。」

女の代用として扱われていると思っていたのに、実はその反対でヒル魔じゃないと興奮しないとムサシは吐き出す。
そのあまりに予想外な告白に、ヒル魔はまともな切り返しも出来きないでいた。
2人とも茹蛸のように真っ赤になって黙り込んでしまう。
身体は繋がったままの情けない格好で、画面からは意味を失ったAVが垂れ流されていく。
そんな空気の中、ムサシがおずおずと切り出した。

「続き、やってもいいか?」
「あっ、テメェ・・・何また大きくしてやがんだよッ!!」

ヒル魔の返事も聞かずにムサシは腰を動かし始める。
硬く強張っていたヒル魔の内壁は、ムサシにあわせてすぐに柔らかくなっていく。

「ひっくぅ・・・や、だ・・・」
「何で?お前だってもう限界だろ?」
「このっ糞エロジジィ・・・・・手ぇほどいて、ビデオ消せって!!」
「我慢きかねぇ。あんまり可愛い事というなよ。」
「言ってね・・・・・・って、やめっ・・・」

こんなにも簡単に腕の中で乱れていくヒル魔を楽しみながら、ムサシはその背中を吸い上げ痕を付けていった。
そのたびに背を反り上げて体内でムサシを抱きしめるヒル魔の痴態にひどく興奮させられる。
ムサシはさっきひとつだけ嘘をついた。
嘘というよりも隠し事をしたといったほうが正解かもしれない。
過去の自分がこのAVのどこで興奮していたのかを考えたのには理由があった。
ヒル魔の中で果てたい欲望があまりに強く、けれども簡単に達してしまうのは男の沽券に関わるから。
少しでも長く持たせようと何か他ごとを探した先で、偶然眼に入ったのが使い古したAV画面だった。
ビデオに気を取られていたのではなく、ビデオで気を紛らわせないとすぐに達ってしまいそうになる自分の堪え性の無さまでもヒル魔に知られるわけにはいかない。

「だから、最初にお前が悪いって言っただろ?」
「?・・・ひっ、あっく・・・やっ、消せって・・・」
「も、余裕ねぇから・・・とりあえず、これ終わったら・・・な。」
「ひん、ひっ・・・・・・ぁあっ!!」

今まで我慢していた為か、ヒル魔はあっけなく白濁とした液を漏らした。
達して敏感になった身体にムサシはガツガツと腰を打ちつけ、背後からヒル魔を犯す。
今度はヒル魔の声が押さえられることはない。
その嬌声はスピーカーから流れる女の鳴き声よりもよほど腰に来る。
ムサシがどれだけヒル魔に溺れているかなど、今すぐ全てさらけ出す必要は無い。
ヒル魔に気を揉ませながら、今日のように少しずつ気づかせていけばいいとムサシは思った。
それがどれだけヒル魔を傷つけることになっても、その傷がムサシを想うゆえのものである限り癒してやることは出来る。

「はっ・・・んん、やっ、熱ぅ!!」

ギリギリまで引き出して再び突き上げ、最後に一番深くへと溜め込んだ欲液を注ぎ込む。
狭いヒル魔の体内は、ムサシの精液で満たされ穢される。
ヒル魔が身体を捩った拍子に腰が揺れ、留まる先の無い白液がムサシを咥え込んだ箇所からその一部とともに溢れ出す。

「ヒル魔、手外したらもう一回、な?」
「な・・・じゃ、ねぇ・・・・・・この糞、ジジ・・・。」

その熱さに震える白い背中を抱きしめて、ムサシは続きをねだる。
ヒル魔があれほど気にしていた画面はテープも切れ、既に砂嵐を映すのみとなっていた。
ザーッという雑音を耳に入れながら、背後で戒められた手が自由になったらまずはあの老けた顔を殴ってやろうとヒル魔は考える。
そして思いっきり殴りつけた後で、今度は正面からきちんと抱いてもらおうと心に決め、あの無骨な手が両手の戒めに伸びるのを待つのだった。