だんな様は鬼畜 2

<バカップル恋のはじまり前編>


設計図を片手に、施工主と建築業者の話し合いが行われている。
傍から見ればそんな風にしか周囲には映らないヒル魔とムサシだった。

「何でお前がここにいるんだっ、本物の施工主はどこやった?まさかとんでもないことしたんじゃないだろうなっ」
「……人聞きの悪ぃこと言うんじゃねぇっ。糞人間、そっちこそ何で覚えてやがる?」
「???あんな強烈なこと忘れるわけが無いだろうが」
「………………チッ、まぁいい。テメェはそのうちなんとかするとして」

ヒル魔はムサシとの会話を一方的に切り上げ、なにやらぶつくさと呟きながら考え事をはじめた。
会話の途切れたムサシはヒル魔の容姿をしげしげと見つめる。
その顔は綺麗に整い、幼い頃に見た絵本の中の魔女とはまるで違っていた。
体型は男にしては華奢で、腰周り等はムサシの片腕で回しきれるんじゃないかと思ってしまう。
それでも、ガリガリに痩せている訳ではなく、引き締まってバランス良く作り上げられた身体つきだった。

「何ジロジロみてやがんだ、糞エロジジィ」

突然ヒル魔から声をかけられムサシは慌てて目を逸らす。

「あっ、いや。角とか尻尾とかどこにあるのかと思って…」
「あ?悪魔じゃあるまいし、魔女にそんなのついてるわきゃねぇだろがっ!」

なんとか見つめていた事実をごまかしたムサシをヒル魔は怪訝そうに見つめる。

「若坊ーっ、こっち手伝い頼むー。」
「おーぅ。おい、俺もう行くから、さっさと元の施工主に家返しとけよ!」
「ああ?おいっ………ったく、少しはビビれっつーんだっ!ふん、変な人間だな」

ムサシがあまりにもあっけらかんと対応してくるものだから、ヒル魔もつられてつい馴れ馴れしくしてしまう。

「あっ、糞!口止め忘れた………ん?んんんっ!」

少し離れた所で仕事仲間と打ち合わせをしているムサシを見つめるヒル魔の目が、何かを思い付いたように怪しく光る。
次の瞬間、ヒル魔の右耳が昨晩同様にピコリと動いた。

「でも、若坊も幸せ者っすよねー。あんな綺麗な恋人がいて、しかも二人の為のこんな家作れるなんて」
「はあ?何のことだ???」

いきなり打ち合わせ途中に後輩大工がわけのわからない事を話し出した。

「またぁ、照れるのはわかるけど」
「???………まさかっ!?」

嫌な予感を感じながらムサシが振り返った先で、ヒル魔はにこやかに微笑みながら手を振っている。

「ほら。恥ずかしがらずに若坊も手くらい振り替えしてあげたらどうですか?あ〜、でも本気でいいなあ」
「……………マジでか?」

無言で向かって来るムサシの姿を、ヒル魔は口端を引き揚げて眺めている。
ヒル魔の目前まで来てもムサシはその足を緩めようとはしなかった。
そしてそのままヒル魔の腕を掴んで内装途中の屋内に連れ込み、剥き出しの床に投げ付けた。

「っつ!?何しやがるっ、糞人間!!」
「………それはこっちの台詞だ!お前今度はいったい何をした!!」

予想外のムサシの剣幕に、ヒル魔は鼻白みながら双眸をキツク眇る。

「………だから何でテメェには効かねえんだ?」
「わけのわからんことばかり言うなっ!!あいつらにかけた妙な術を今すぐ解いて出ていけっ!?」
「………………。」
「ッ!?」

ヒル魔は黙ったままムサシを睨み付けていたが、不意に両耳をピルルと震わせ途端にムサシの目の前から煙のように消えていた。

「なんなんだ………」

呆然としながらヒル魔がいたはずの床を見つめていると、大工仲間から声をかけられる。

「あれ?若坊、カノジョ連れ込んでたんじゃないのか?」
「………元に戻せって言ったのに、あのバカヤロウ」

大工仲間にいわれのない冷やかしを受けながら、黙々と仕事を続けるムサシの様子をヒル魔は空から眺めていた。

「………力が使えなくなったわけじゃ無さそうだな。ふん、まぁいい。ちょうどいい隠れみのも見つかったことだしな」

ヒル魔は箒に腰掛け組んだ足をプラつかせながらニヤリと笑うと、どこかへ飛んでいった。





<バカップル恋のはじまり後編>


長い一日がようやく終わり、ムサシは心身ともに疲弊しながら家へたどり着いた。

「あー……疲れた」
「よぉ、遅かったな。ダーリン」

ガタンッ

部屋に入った瞬間に、今日一日の疲れが一気に吹き飛ぶくらいの衝撃がムサシを襲い、思わず壁に背中を預けてしまった。

「………何でお前が俺の部屋にいるんだ?」

衝撃の元締めは鮮やかな笑顔をムサシに投げかけている。

「やっぱりテメェには効かねぇみたいだな」
「なにがっ!なんでだっ!!なんなんだっ!!!」
「黙れ、糞人間」
「んむっ…」

今さっきまで部屋の真ん中にいたはずのヒル魔が今はムサシの前にいて、その白く長い指でムサシの口を塞いでいる。

「いいか、よく聞け。このオレ様が何でだかわかんねぇが、テメェの頭だけはいじれないらしい。だからといって馬鹿みたいに騒がれても困るし、テメェをほっとくわけにもいかねぇ」
「ンググッ……」
「最後まで聞けっ!!そこでだ、ついさっきこの世界に来たばかりの不慣れなオレのガイドとしてテメェを使ってやる」
「ぶはっ!!ふざけるなっ!!なんで俺がお前に使われなきゃならんっ!!」

ムサシはヒル魔の手を自分の口から引き剥がして怒鳴る。

「それからダーリンてなんだっ!!さっさと大工連中の誤解も解いてこいっ!!」
「……?だって人間ってのは恋人とか夫婦ってやつがツガイでいるもんなんだろ?オレ達もそういうことにしておけば何かと都合がいいじゃねぇか」
「それはお前の都合だけだろうが!?」

ヒル魔の勝手な物言いにムサシの神経は逆なでされる。
ムサシが何に対して怒っているのか、さっぱり見当のつかないヒル魔はきょとんとした顔を見せている。

「じゃぁ、どうするんだ。オレはもうテメェと一緒にいるって決めたからな。絶対離れねぇぞ」
「………だったら恋人らしいことされても文句は無いな?」
「は?……んっ!?」

そう言ってムサシは強引にヒル魔の唇を奪った。

「んなっ……あっ…、はっ…。ちょっと待て!!オレは魔女だけど男だぞっ?人間てのはそういうこと気にしまくるんじゃねぇのか?」
「………あのなぁ、お前がそれを言うのかっ!恋人だの夫婦だのツガイだの言ってたのはそっちだろうが」
「いやっ、そりゃそうだけど………テメェはいいのかよ?」
「オレは別にどちらでも構わん」
「うっ…」

抑揚のあまり無いムサシの声にヒル魔が一瞬ひるむ。
さてどうしようかと考えるヒル魔の隙を突いてムサシが押し倒してくるから、慌てて魔法を使って逃げようとした。
しかし、肝心の耳先を素早くムサシに捕まれて上手く魔術が使えない。

「なんでっ?」
「ふん、やっぱりな。おかしなことが起こる前には必ずお前の耳が動くから、もしかしてと思っていたんだが」
「離せっ!!糞人間がぁぁ!!」
「こういうことが嫌ならとっとと出て行って2度と俺に関わるなっ!!それが出来ないなら何されても文句を言うなっ!!………さぁ、どうする?」
「………糞っ!!」

耳を捕まれたままのヒル魔ではムサシに勝てるだけの腕力も無く、二者択一を迫られる。
しかし、ヒル魔のほうにもまだ口にしていない事情があり、このまま出て行くわけにも行かなかった。
仕方なくヒル魔は頷いて抵抗を止める。

「好きにしやがれっ……」
「もし今後、一度でもわけのわからん力を使って抵抗したら、その耳へし折ってほっぽり出すからな。それでもいいのか?」
「………良いって言ってんだろうがっ!!糞っ!!」

まさかヒル魔がこちらの条件を受け入れるなんて、思っていなかったムサシはその鉄面皮な表情の下で少し驚いていた。
少し脅かせば簡単にいなくなるだろうと思っていたのに、まさか本当に犯る羽目になるなんてと、ヒル魔を見下ろしてドキリとする。
勝気な瞳が悔しそうにムサシを見上げてくるさまは結構楽しいもので、この綺麗な顔が泣き顔に変わるのを見てみるのも悪くはないと思ってしまった。

「……っ!」

手始めにその綺麗な顔を舐めあげてみる。
一瞬肩をすくませて怯えたように見せる姿が、またムサシの鼓動を跳ね上げる。

「お前、今何かしたか?」
「はぁ?するわけねぇだっ……んっ…んぅ」

ムサシは自分を煽る魔法か何かをヒル魔に使われたのかと思った。
けれどもヒル魔の返答からそうではないらしいことがわかって、この気持ちを悟られたくなかったから、わざと言葉の途中でヒル魔の口を塞いだ。

「んんっ…んあっ……あっ!」

ムサシの指がいつの間にか服の下に入ってきて、ヒル魔の薄い胸をまさぐっていく。
その大きな手は以外に器用で、探し当てたヒル魔の胸の飾りを弄んでいく。

「はぁ…んっ」

初めはくすぐったいだけだったはずなのに、ムサシに潰され揉まれていくうちに、ヒル魔は胸の先から奇妙な痺れを感じ出した。

「んんぁっ…んんっ、んっ」
「ここ、好きか?」
「あっ…なにっ、言って…んはっ…」

ムサシが大きく服を剥ぐから、両胸は外気に曝されてその温度差に少し先を硬く尖らせる。
それを見たムサシが片方の胸先に舌を絡ませ吸い上げてくる。

「ぅあっ…んっ……」

甘く噛付かれて、また痺れとともにヒル魔の口から声が上がる。
口に追われて胸から離れたムサシの片方の手がヒル魔の下肢へと伸ばされる。

「……んっ…ひっ……」

ムサシの手はここでも器用にヒル魔の淫茎を探し当て、弄び始める。
すでに硬くなり始めていたそこは簡単に勃ち上がり、ムサシの指を絡みつかせやすくする。

「ああっ…んっ、はぁ……」
「魔女でも気持ちよくなるもんなんだな。」
「んっ……からっだは…テメェとあんまりっ変わらなっ……あっ!?」

ムサシの遠慮ない動きに我慢できずに小さく短い悲鳴とともに、ヒル魔が達する。
その様子にのどを鳴らせながら低く笑うムサシをヒル魔は荒い呼吸の中睨みあげた。

「確かに身体は同じみたいだな。けど、あんまり使ってないだろ。」
「……っうるせぇ!!」

目の前にヒル魔のもので汚れたムサシの手を見せ付けられて、ヒル魔は真っ赤になって怒鳴ってしまう。
ヒル魔をわざと怒らせて、うろたえる姿を見るのは本当に楽しいとムサシは感じていた。
そしてもっと本気で泣かせてみたいと思い、ヒル魔の後孔へと汚れたままの指を這わせていく。

「ひぃっ!!…あっ、なに?あっ……やぁっ!!」
「男の恋人同士はここ使うんだよ、まさか知らないわけじゃないだろ?」
「……うっるせ…んあっ…」

ヒル魔の身体は意外と簡単にムサシの指を受け入れていく。
もともと快楽を求めるのが魔女の習性のひとつなのだから当たり前とはいえ、初めてのことなのにとヒル魔は自分の身を恥じてしまう。
誰よりも負けん気の強いヒル魔だったから、実は初めてですとも言えずにムサシの条件を受け入れてしまったことを、今は後悔している。
それでも今更言うのも悔しくて、歯を食いしばって耐えようとしているのに、ムサシの指がお構い無しに内壁をまさぐり弱い部分ばかりを引っかいてくる。

「んゃっ…ぁはっ……」
「へぇ、結構慣れてるのか?お前も楽しんでるみたいだし、そろそろいいか?」

指に絡みつく内壁とヒル魔の嬌声に勘違いしたムサシが次の動作へと移る準備を始めた。
ムサシの指が孔を広げたかと思うと、その隙間から太くて熱い棒が差し込まれる。

「ふっ…え?……っああぁ!!」

痛みこそないものの、初めての圧迫感にヒル魔は息を詰まらせる。

「……ぅうっく…んはっ…あ……」
「やっぱり慣れてるのか?……全部飲み込んでるぞ?」

ムサシはそう言って、ヒル魔の呼吸が落ち着くのも待たずに腰を使い出した。

「ひぁっ!?……あっ……やぅ…」

初めての挿入なのに痛みを感じず、それどころか簡単に快楽を見つけ出して貪りつく自分の身体に困惑と嫌悪を感じながら、ヒル魔はムサシに犯されていく。
そんなヒル魔の気持ちも知らずに、ムサシはただ自分が射精するためだけに動きを強めていくから、ヒル魔はまた声を上げる。

「ぃやっ……あっ…んぁっ……はぁっ、はっ、……やっめ…」

ヒル魔の声は自分の嬌声にかき消されて、ムサシにうまく届かないでいる。
ムサシのほうも限界が近いのか、ヒル魔の様子に気を配る気配を見せなかったから、ヒル魔は諦めて目を瞑る。

「……ぅあっ…あっ…もっ……だっめ…だっ……ぁああ!!」
「……………っ」

ヒル魔の背が弓なりにしなり、内壁が強く収縮してムサシから精を搾り取る。
ムサシも息を詰まらせてヒル魔の中へ全て吐き出した。

「魔女ってだけあって結構良かった」

ヒル魔の上に倒れこんだままムサシが囁く。

「……なんか、後ろがグチュグチュして、気持ち…わりぃ……」
「お前の世界ではグチュグチュしないのか?そうか、人間とは違う感じか」

ムサシの勘違いで、ヒル魔は初めてという事実を悟られずにすんだようだった。

「っもういいから、早く抜けって……あっ…何また硬くしてんだ、テメェっ!!」
「いや、もうちょっといいだろう?これから恋人になるんだし、このくらいはな」
「ふざけっ…にゃぁっ!あっ…はぁ……」

ヒル魔の意見を聞かずに、また腰を動すムサシに揺さぶられてヒル魔の抗議の声は嬌声へと変わっていく。
そんなヒル魔をどこか冷静に観察しながらムサシはこれからのことを考えていた。
売り言葉に買い言葉で始まったこの全てにおいて異常な関係がどうなるのかはわからなかったが、その代価がこれなのならば、もう少し巻き込まれてみてもいいかとムサシはひっそりと笑った。