酔う錆 -後編-

〈4〉

仕事柄、飲酒の機会も少なくは無いムサシに対して、酒を飲み慣れていないヒル魔はその肌の白さも手伝い、徐々に肌が薄桃色に染まっていった。
それを眺めながらムサシはわざとヒル魔に酒を勧めていく。

「テメェ...なんかオレのほうが多くねぇか?」
「気のせいだろう。それともこのくらいで降参しとくか?」
「けっ!!なめんなっ!!」

ムサシに煽られヒル魔はまた一杯酒を飲み干す。
休むことなくコップに注がれる酒はヒル魔の思考を奪い去り、瞳は正常を失っていった。

「ヒル魔、大丈夫か?」
「ん〜......。」

ムサシの問いにも答えきれずにヒル魔はとうとう机に突っ伏してしまった。
酔いつぶれたヒル魔を眺めながら、こんな卑怯な手を使わなければヒル魔と向き合えない自分にムサシは苦笑する。
ムサシは少し考えあぐねて、ため息をひとつつくとヒル魔に手を伸ばして引き寄せた。

「......んっ」

ヒル魔の身体はぐにゃりっと崩れてムサシの腕になだれ込む。
状況を全く理解していないヒル魔の顎を上向かせ、ムサシはその唇に貪りついた。

「んんっ......っふ...んっく...」

ヒル魔は抵抗することなくムサシからのキスを受け入れる。
鼻からは甘えたような息が漏れ、誘うようにムサシを煽る。
ムサシはそのままヒル魔の身体をまさぐり胸の飾りへと手を伸ばした。

「ふあっ......ぁ?......っう...」

酒のせいで敏感になったヒル魔の身体はとても熱く、赤い飾りは爪で軽く引っかいただけで硬く立ち上がる。
ムサシが摘まんで軽く押しつぶすたびにヒル魔の身体はびくつき、閉じきれない唇からは涎が伝う。
手からの感触だけでは我慢できなくなったムサシはヒル魔の身体を露にし始めた。
力の入らなくなったヒル魔の身体から衣服を引き剥がすのは、意外と難しく、ムサシは少し乱暴に脱がせた。
そして目の前に現れた赤い粒を口に含む。

「ヒアッ...ぁ・・・ん、やっ...」

ヒル魔は胸の突起を甘く咬まれるたびに喘ぎ声を漏らす。
胸への悪戯を続けたまま、ムサシは下衣へと手を伸ばした。

「あっ...ひぅ...」

ズボンの上から敏感な部分に触れられたヒル魔が腰を揺らす。
そこは布を通して硬さを伴ったその形をムサシの手に伝えてきた。

「ひっ...ぃ...ぁっん」

ヒル魔の声に気を良くしたムサシは、ズボンの上からヒル魔を握り揉みしだいていく。

「ぁあん......やっ...やっらぁ...」

ヒル魔はもどかしそうに身を捩り、ムサシの手を退けようとする。
そんなヒル魔の抵抗を無視してムサシはヒル魔に快楽を与えてくから、ヒル魔の前は張り詰めていき、その窮屈さと苦しさに呻き声が上がる。

「...やっ、苦しっ......」
「ここから出して欲しいのか?」

ムサシの言葉にヒル魔は必死で頷く。
ゆっくりとボタンが外され、ジッパーを下ろす音がする。
ヒル魔は少しでもムサシが脱がせやすいようにと、もたつきながらも腰を浮かせた。
一度に下着まで剥ぎ取られ、ヒル魔はその開放感に安堵の息を漏らす。

「......ふぅ、......んっ...ひあっ!」

次の瞬間、ヒル魔はムサシに根元をきつく縛られ悲鳴を上げた。

「やぁっ、な?......」
「今日は簡単にいかれたらちょっと都合が悪いんでな。」

ムサシはそう言うと、ヒル魔のものを口に含んだ。
部分的に絞り上げられたそこは、とても鋭敏にムサシの舌の感触を伝えてくる。
ヒル魔が拘束を外そうと手を伸ばしても、ムサシの頭に邪魔されて届かない。
せめてムサシを引き離そうと頭を押してみても、余分な刺激が加わって余計にヒル魔を追い詰める結果となった。
せき止められた奔流はヒル魔の身体を巡って、羞恥も思考も何もかもを奪い去っていく。

「ぁあっん、やっ...ムサッ......」

ヒル魔の声は色を増して、ムサシに限界の近さを知らせる。

「そろそろか。」
「......?」

ムサシはヒル魔の耳元で囁いた。

「いきたいか?」
「んっ......ぁ...お願っ...」
「この間の相手が誰だか言えば、いかせてやってもいい。」
「っ!!」

焦点のぼやけたヒル魔の目に一瞬、正常な光が戻る。
そして潤んだ目をきつく眇め、ムサシを睨みつけた。

「......テメェにはっ言わ...ねぇ...っく」
「まだ早かったか。」
「...っい...ぁ......んんっ」

ムサシはヒル魔にまだ余裕があることを感じ取った。
その余裕を剥ぎ取ろうと、先走りの滑りを利用してムサシの指がヒル魔の体内に侵入していく。

「ちょっと触らなれかったくらいでこんなに狭いんだから、あの時は相当やられてたんだろうな。」
「やぁっ...やっめ、嫌...ぁあっ」

ヒル魔の内壁は、ムサシの指を押し出そうと収縮を始めるが、ムサシは手馴れた様子でさらに奥へと指を埋め込んでいった。
ムサシを拒絶できないと知ったヒル魔の内壁は抵抗をやめて、今度は逆にムサシの指を飲み込もうと動き始めた。
ムサシが指を動かすたびに、ヒル魔の先からは透明な体液が漏れ出していく。
体液はヒル魔の身体を伝い、まだほぐれきっていない入り口を濡らしていく。
ムサシはそれを利用してさらに指を増やし、ヒル魔の孔を拡げていった。

「あっ、ぁあ...はっ......ひぁっん.....」
「さっきよりも充血して苦しそうだな。誰にやられたのか言えよ、楽になりたいだろう?」
「......っいやっだ...っ」
「なら好きにしろっ」
「ひっ...やっ......いやぁぁぁっ!!」

ムサシは指をぎりぎりまで引き抜き、ヒル魔の入り口を指で開くと猛る自分の肉体を差し入れた。
ヒル魔はムサシに貫かれて、背中を仰け反らせる。

「......ひぃっ!!やっ...あっ...」

ムサシの好き勝手な動きに翻弄されながらも、後一歩のところで達せない苦しみにヒル魔の顔は歪む。
何度も何度も乱暴に揺すられて、ヒル魔の嬌声は狂気じみたものへと変わっていく。

「おまえはっ...誰とでも、こんなことするんだよなっ」
「あっ...違っ......やぁっ、いかせっ......ひゃっう...ぅ...むさっしぃ...」

ヒル魔に呼ばれてムサシは一瞬動きを止める。

「言う気になったか?」
「...もっ.....いかっせて...ぇ......やぁっ!!」

言葉のかみ合わないヒル魔に罰を与えるように、ムサシは一度腰を振った。

「......言うっから......お願い......むさっ」
「相手は誰だ?」
「......なっにぃ?......わかんねっ...ひぐ」
「こんなことやる相手はあと何人いるんだ?」
「......だけ...ヒアッ...ムサシっだけぇ......んぁっ......はっ......?」

相手は自分だけだと訴えるヒル魔の姿に、ムサシの心臓が跳ね上がる。
急に動かなくなったムサシに、ヒル魔は不安そうな表情を浮かべて手を伸ばす。
ヒル魔に頬を撫でられて、ムサシはまた腰を動かしだした。

「うあっ...いきたっい......取って、取ってぇ!!」

ムサシは泣き叫ぶヒル魔を観察しながら、わざと性急に追い詰めていく。
ヒル魔が意識を手放すのと、ムサシが欲望を吐き出すのはほぼ同時だった。
小さく痙攣する身体を眺めながらムサシはヒル魔の拘束を解いた。
タイミングを外して開放されたヒル魔は、勢いなく白い液を零し続ける。



〈5〉

翌日、ムサシはヒル魔のうめき声で目が覚めた。
頭を抱えたヒル魔は蹲って二日酔いの苦しさに耐えている。

「うぅーーーーっ、気持ち悪ぃーーーー、頭痛ぇ。」
「飲みすぎだ。」
「誰のせいだとっ!!.....うっ」

ニヤニヤと笑うムサシの様子に、ヒル魔は酔ってからの記憶がないことに気が付いた。

「.........おい、糞ジジィ...昨日オレ何か言ったか?」
「別に。」
「っ!!!!」

その答えに、ヒル魔は昨夜までの殺伐とした空気が消えていることを知る。
それからやけに機嫌の良さそうなムサシの態度に、ヒル魔は自分の失態を感じとった。
途端にヒル魔の顔は火を噴いたように赤く染まり、心臓の音がやけにうるさく耳奥に響いてくる。
そんなヒル魔を眺めながら、ムサシは口を開く。

「この嘘吐きが。」
「なっ...何がっ!!」
「この間の相手、オレだったんだろ。」
「違っ!!......ぅあ、違わねぇけど違うっ!!」
「ほら、やっぱりオレだろうが。」
「!!!」

ムサシのかけたカマに、ヒル魔は自分が見事にかかってしまったことに舌打ちする。
もう何も暴かれたくなくて慌てて布団にもぐりこむヒル魔を、ムサシは上から押さえこむ。

「どけっ!!この糞筋肉デブッ!!」
「何で素直に言わないんだ?そんなに苛められるのが好きなのか?」
「違うっ!!大体あれはテメェが悪いんだっ!!」
「何で?」
「...っ!もう知らねぇから、どきやがれぇっ!!」

暴れるヒル魔を押さえ込んだまま、ムサシは考えをめぐらせる。
相手が自分だということはわかったが、そのことを隠したがる理由がどうしてもわからない。
当のヒル魔はウジウジとした気持ちを悟られたくなくて、布団を跳ね飛ばしムサシごと蹴り上げた。
そして激しい動きの直後に襲っってくる頭痛と吐き気に耐えかねて、洗面所へと逃げ出す。
後に残されたムサシはヒル魔が怒っている理由が全くわからず頭をかいた。

「さっぱりわからん。昨日の可愛さは幻覚か?」

素面の状態でこれ以上ヒル魔から何かを引き出すのは無理だと、ムサシは経験上悟っていた。
ならば次こそは慎重に、ヒル魔が酔いつぶれてしまう前に上手くやろうと、ムサシは不穏なことを考える。
そんなムサシの悪巧みに脅かされていることにも気付かず、ヒル魔は洗面所に篭もって出てこられないでいた。

「ウエッ......ゲホッ...、もう二度と糞ジジイの酒は呑まねぇっ!!あの糞鈍がぁっ...うっ」

そして二人が新年を迎えたことに気が付くのはもう少し落ち着いてからになるのであった。