ザンザスには貞操観念というものが薄く、自分の身体すらも道具のひとつというように扱うところがあった。
特に自分が9代目の実子ではないと知って以後、そのほうが手っ取り早く効率的であればザンザスはその身体を躊躇なく利用した。
しかしその反動か、それ以外のときは他人に触れられる事をひどく嫌った。
綱吉との関係も周囲は綱吉が勝手にザンザスを追い掛け回しているだけだと思っていた。
ザンザスにとって大切なのはボンゴレが最強であり続けることであり、それを守るために綱吉が必要なのであれば綱吉をボンゴレに縛り付けるために今回も自分の身体を使っただけだった。
過去から来た綱吉にしかけた悪ふざけは、自分にしつこく執着してくる未来の綱吉に対するただの意趣返しでしかない。
ただひとつの誤算はザンザスの身体が予想外に反応してしまった事だった。
身体の熱が静まるまで一眠りしようとした矢先に、スクアーロがいつものように邪魔をしてきた。
どこまでも気の聞かないスクアーロに腹を立てながらも、慣れた手つきで的確に責められてはいまさら止めさせることもできない。
「……っ、さっさと……終わらせろっ」
まだ話せる余裕のあるうちにザンザスはスクアーロに言葉短く命令した。
スクアーロの手はザンザスの予想とは逆にその昂ぶりからあっさりと離れてさらにその奥へと伸ばされた。
綱吉が消えてから随分とこういったことからは離れていたはずの身体なのに、ザンザスの身体は抵抗もそこそこにスクアーロに指を飲み込んでいく。
ただでさえ身体に溜まった熱は吐き出してしまわなければおさまらないというのに、奥まで疼きだしてはたまらない。
止めさせようとスクアーロを怒鳴りつけてみても、身体の中に入った指はザンザスを追い上げるために動き続ける。
身の内からじわりと滲み出る感じなれた感覚を押し殺そうとザンザスは身体を丸く縮みこめた。
スクアーロがなにかくだらない事を話していたようだが感覚を押し殺す事に神経を集中させているザンザスにはよく聞こえない。
それでもザンザスは少しでも余裕のある振りをするために、切れ切れに聞こえる単語に適当な反応を返していく。
「……クソッ!」
「う゛お゛ぉいっ!」
「うるっさ、ぃ」
「どっちにすんだぁ?」
「なにがっ!!」
「なにがって……聞いてなかったのかぁっ、この意地っ張りがぁっ」
スクアーロは力任せにザンザスをひっくり返し、そのまま仰向けに身体を押さえつけた。
ようやく現れたザンザスの唇にスクアーロの目は奪われ、ぽってりとふくらみ濡れた唇に誘われるようにスクアーロが顔を近づける。
唇が触れ合う寸でのところでとっさにザンザスの手がスクアーロの口を塞いでいた。
「……フガッ」
「いきなり何しやがるっ、このドカスッ!!」
「モガッ……」
「はっきりしゃべれっ!!」
ザンザスは自分の手がスクアーロの口を押さえつけていることも気付かずにスクアーロを責める。
怒鳴りつけてくるザンザスの手を振り払い、スクアーロも声を張り上げた。
「う゛お゛ぉいっ! てめえで塞いどいて無茶いうなぁっ!!」
「うるせぇっ!!」
「……もういいのかぁ?」
「ぁあ?」
スクアーロが指差した先にはまだ滾ったままのザンザスが震えていた。
人に言われてようやく自分の状態を思い出したザンザスの頬が一瞬にして朱に染まる。
さっきまで散々弄られていた後孔も都合よく物足りなさを訴えはじめた。
「……っなんとかしろ!」
「はいはい……っとにワガママなボスさんだぁ」
「るせぇっ……んっ」
今度はザンザスもスクアーロの唇を拒むことなく受け入れる。
いったんは下がりかかっていた熱が舌先を触れ合わせるだけで一気に上がっていく。
もともと我慢の限界に近づいていたザンザスの腰が焦れてスクアーロに擦りつけられる。
スクアーロは口付けを交わしたまま、ザンザスの足のあいだに割り込ませた足でザンザスを慰めた。
「……ふっ、ぅ……カス鮫っ」
「わかってるさ」
「っんぁ……」
スクアーロの指が再びザンザスの身体へと埋め込まれる。
妖しく腰を揺らしながらも声をかみ殺して耐えるザンザスの眉間にはいつもと違った種類の皺が刻み込まれていた。
快楽により寄せられる眉間の皺がもっと深くなるようにとスクアーロは指を増やしてザンザスの後孔を広げ続ける。
やわらかく熱い肉壁へ指先をもぐりこませて奥のほうまでほぐそうと指を食い込ませるたびにザンザスの足が跳ねるように痙攣してみせる。
「もっ……充分だっ……」
「やけに急ぐじゃねぇかぁ」
「だれのっ……せい、だ」
「焦らしたのはオマエのほうだぞぉ」
「このっ……ドカスがっアッ……ぅ」
お互いにわずかに着衣を乱しただけの今の状態では向かい合った姿勢で先に進む事は難しい。
しかしいまさらザンザスを裸に剥いていく暇もない。
もしそんな事をしようとすれば間違いなく焼かれるに決まっている。
今のザンザスにはそれほど余裕がなかった。
「仕方ねぇ、抱き合うのはまた次だぁ」
「……ひあっ、急に抜くっなぁ」
「抜かなきゃひっくり返せねぇだろうがぁっ」
何をしても文句しか言わないザンザスの口をもう一度塞いでやりたいと思わないでもないが、正直なところスクアーロも先へと進みたかった。
最初と同じようにザンザスを腹ばいにしてその尻を持ち上げる。
うっすらと浮かび上がった傷がザンザスの色の白さを際立たせる。
スクアーロは手早く前をくつろげると手馴れた様子で避妊具をつけてザンザスの背中に覆いかぶさった。
「うぐっ……」
「チッ、さすがに……まだ狭ぇ」
「このっド下手がぁっ……ぁあっ」
痛みにうめくザンザスを鎮めるようにスクアーロはザンザスの滾りへと手を伸ばした。
スクアーロに掴まれたザンザス自身は後ろで感じる痛みなど少しも気にしていないのか、依然硬さを保っていた。
やわらかく扱きあげられてダラダラと幹を伝うぬめりが増えていく。
同時にザンザスの後孔入り口は少し柔らかさを取り戻した。
ザンザスの呼吸と小さく跳ねる身体に合わせてスクアーロはゆっくりと腰を進めていく。
頭さえ埋め込んでしまえば後はザンザスの身体が勝手に呑み込みはじめる。
「……んっぅ」
「相変わらず……覚えはいいんだがなぁ」
「っるせ……ぇ、とっととっ動いて……終わらっ、せろ」
「……だなぁ」
「んあっ、ひっ……ゥウ」
ボスの命令に従い、スクアーロは一気に奥まで自身をねじ込んだ。
ザンザスは声をかみ殺そうとシーツにしがみついて自分の口を塞ぐ。
ゆっくりとした動きにザンザスの肉壁がずるりと外へかき出されそうになる。
それに反発するようにスクアーロを捕まえて中へと引きずり込み絞り上げるザンザスの身体にスクアーロは舌打ちした。
「う゛お゛ぉい! こんな身体しててっ、普段は触らせもしねぇなんて……なぁ」
「んんっ……んっ、ふっ」
ザンザスの耳にスクアーロの声は届いていない。
スクアーロの肉に身体の内から押し広げられ射精感を刺激するようにしこりを押しつぶされて、その刺激は脊髄をとおり電流のように体中を駆け巡る。
ザンザスに喰いつかれたままのスクアーロも薄いゴム越しにその熱を感じながら雄特有の排泄に似た感覚が近づくのを自覚する。
「んっ、んんっ……んあっ……っくぅ!!」
「う゛お゛っ!!」
ザンザスの背が反り返り、スクアーロの手の中に熱い体液が吐き出される。
同時にスクアーロに柔らかく絡みついたザンザスの肉が勢いよく収縮する。
強く引き絞られる感覚に煽られて背筋を這い上がってきた波に逆らわず、スクアーロもザンザスの中で己を吐き出した。
「はっ……はぁ、クソッ……重てぇ、どけっドカスっ!!」
「う゛お゛ぉい、少しは余韻も楽しめぇ」
「必要なぃ、ッ!!」
ザンザスが話し終わる前にスクアーロはその身を引いた。
ずるりと身体から這い出るスクアーロの肉感にザンザスは再び身体を震わせる。
スクアーロの重さから開放されたザンザスは少しふらつく足でシャワールームへと向かう。
その姿が無事にドアの向こうへ消えるのを見届けてからスクアーロも簡単に身づくろいを終わらせた。
シャワールームからかすかな水音が聞こえたのを確認して、スクアーロは部屋の外へ出て行く。
ザンザスを守るように扉の外に立ったザンザスの目には見覚えのある不安そうな顔がうつっていた。
「う゛お゛ぉい、いまさら何のようだぁ?」
「あのっ……ザンザスはなんでオレにあんなことしたのか気になって……っていうかこの部屋なに?」
「知りもしないのにここまで来ちまうところは、まぁ認めてやるがなぁ」
「ザンザスに話を聞きたいんだけど」
「いまのお前じゃ聞いても意味はねぇぞぉ、あと何年かしたら聞きに来い」
「でもっ!!」
「う゛お゛ぉいっクソガキィ、いまは敵に勝つ事だけ考えろぉっ!! わかったらとっとと行けぇっ!!」
「うわぁっ!!」
まだ子供とはいえ、いつまでも見たい顔ではない綱吉に向かってスクアーロは匣兵器を取り出した。
暴雨鮫は逃げ出した綱吉をからかうように大きな口をあけてその後を追う。
綱吉はザンザスを傷つけ続けているボンゴレ10世だから、スクアーロも子供相手に大人気ないとは思わない。
ザンザスが部屋から出てくるまでのあいだ、そのくらいの悪戯は許されるはずだ。
スクアーロは口端を引き締めて扉の前に立ち続けていた。
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