amaro 2




日本でのボンゴレファミリー拠点地となる並盛町地下基地の廊下をスクアーロは以前の記憶をたどって進んでいく。
頻繁に来ているわけではないけれど、ザンザスについて共に訪れた回数は決して少なくない。
地下基地には過去から来た綱吉たちの知らない部屋がまだたくさんあり、スクアーロが今向かっている部屋もそのうちのひとつだった。
そこはザンザスのために用意された部屋で、ザンザス以外の人間がたどり着くにはスクアーロでも迷いそうになるほどの複雑な構造と仕掛けが施されている。
ようやく見覚えのある扉の前に立ったスクアーロは遠慮なく部屋の中へと入っていく。
部屋の中ではザンザスが高級な造りのベッドに沈んでいた。

「う゛お゛ぉいっ、ガキ相手にあれはやりすぎなんじゃねぇかぁ?」
「…………」
「なんだぁ? タヌキ寝入りかぁ?」
「…………血が臭ぇ、出て行けカスザメ」
「う゛お゛ぉいっ! やったのはだれだぁっ!!」

スクアーロは怒気を隠しもせず、ベッドへ上がりザンザスに覆いかぶさった。
さきほどザンザスから受けたスクアーロの傷は出血の割にそれほどひどくなく、ザンザスが引きこもった部屋に着くまでには血も止まっていた。
それでも服に染み付いた血はまだ乾いておらず、真っ白いシーツへと染み移っていく。

「ドカスがっ、シーツが汚れる」
「うるせぇぞぉクソボス、んなこといつものてめぇなら気にしねぇだろぉ」
「誰がクソだこのカス鮫がっ! また脳天ぶちまけられたいのか?」
「できるもんならやってみろぉ、そんな余裕がないからココに篭ったんだろぉ」
「…………っ」

ボンゴレ10代目の拠点地となるこの場所にはザンザス専用の部屋があつらえられている。
それは未来においての綱吉とザンザスの親密な関係を物語っていた。
スクアーロは黙ったザンザスをシーツごと抱きしめた。
腕の中で丸くなったままのザンザスにスクアーロは声を落として語りかける。

「ガキ相手にからかうつもりが煽られたかぁ?」
「……るせぇ」
「自分で処理もできないくせに後先考えずに動くからだぞぉ」

溜め息混じりに先ほどの愚考を諌めるスクアーロの腕の中でザンザスはまた少し身体を強く丸めた。
プライドの高いザンザスのことだから、綱吉に対して自分からしかけた悪ふざけによって逆に自分が熱くなるなど恥以外のなにものでのなかった。
ましてやその熱を自分で処理するなんて事はできるわけがない。
だからこうして誰も入ってこられない自分だけの部屋の中で、ただ熱がおさまるのを待っているつもりだった。

「…………とっとと出て行け……ッドカス」
「う゛お゛ぉいっ、こんなに硬くなってりゃ自然におさまるなんて無理だぞぉ」
「さわんっな」

スクアーロはいつの間にかベッドとザンザスの間に右手を忍ばせて、その中心で息づいていたザンザス自身を衣服の上から押さえつける。
ザンザスはスクアーロの手が動きにくくなるようさらに身体を丸めてみるが、逆にスクアーロの手を強く自身へと押し付ける事となった。
密着した事でスクアーロの手は器用に隙間をぬって衣服の下へと差し込まれていく。
ザンザスが身をよじりその手から逃れようとしても、スクアーロの左腕を振りほどけず身動きが取れない。
もともとザンザスを押さえつけているスクアーロの左腕は剣を振るうために取り付けられた義手の力と義手や剣を意図も簡単に振り回せるだけの腕力が備わっている。
それでも普段のザンザスが相手ならばきっと容赦なく振り払われてしまうところだが、いろいろな意味で力を入れづらい状況にある今のザンザスにとっては厄介な左腕だった。

「……離っ、せ」
「ちゃんと出たらなぁ、ってんな簡単に出るならわざわざココに篭らねぇかぁ?」
「……っん」
「う゛お゛ぉいっ、いいかげん意地張るのやめろぉ……いつまでもこのままじゃ痺れが切れるだけだぞぉ」
「てめえがっ……かっ消えりゃいいだけだろっぅ」
「そりゃいまさら無理だぁ、こっちもそれなりに我慢してるんだぁ」
「クソッ……好きにしろっ!」

乱れそうになる息を殺しながらザンザスは短く言葉を吐き捨てた。
ザンザスが抵抗を緩めるとスクアーロは2人を隔てるシーツを口にくわえてそっと引き摺り下ろした。
ベッドに突っ伏するような姿勢でうずくまったザンザスのうなじにうっすらと古い傷跡が浮かび上がっている。
淡いピンク色に染まったその傷跡にスクアーロは優しく唇を落とした。
暖かい唇が肌に触れるたびにザンザスの身体は小さく震える。
ザンザスから溢れたぬめりをかりて、スクアーロはその指先をさらに奥へと忍ばせた。

「ひっ……余計な事してんじゃねぇドカスッ!」
「べつに余計じゃねぇぞぉ、やっとかなきゃ痛ぇだろうし」
「前だけしごいて終わらせろっ!!」
「う゛お゛ぉい、それじゃオレが楽しくねぇ」
「ドカスがっ!!……ひぅっ」

スクアーロの指が一本ゆっくりと体内に埋め込まれていく感触にザンザスは肌をあわ立たせた。
異物を押し出そうとするザンザスの身体があきらめるまでスクアーロは慎重に指での刺激を与え続ける。
もともとそういった行為には慣れきったザンザスの身体はすぐに反応を返すように変化していく。
このまま流される事を嫌うザンザスが身動いてスクアーロの腕から抜け出そうともがく。
その姿は相手をしているスクアーロとしてはさすがに気分のいいものではない。
好きにしろと言いながら、頑なに背中を向けたままのザンザスにスクアーロは少し意地悪をしたくなった。

「う゛お゛ぉい、そんなに嫌ならちょっとくらいは譲歩してもいいぞぉ」
「…………っ?」
「しごいて出すまでのあいだ、キスさせろぉ」
「なん……っでだ?」
「べつにレモン味じゃねぇと嫌だとかは言わねぇぞぉ」
「ふざけるなっ!!」
「ふざけてねぇ……いいかげんこっち向けぇボス」
「…………っ」

もともとザンザスと肉体関係を持ったのは付き合いの長いスクアーロのほうが綱吉よりも先だった。
生い立ちのせいかザンザスは性交渉をあまり好まなかったが男である以上、時にはどうにもならなくなる場合がある。
自分で処理する事すらひどく嫌っていたザンザスにとって、そばにいたスクアーロがちょうどいい相手だった。
欲情を開放するためにザンザスはスクアーロにその身を与えた。
ザンザスが受け身だったのは、そうしていれば自分から動く必要がなかったからだったしスクアーロもそのほうがやりやすかった。
そこには恋や愛といった感情はなく、いってみればガキ同士の悪ふざけの延長でしかない。
現在では欲望がたまりやすかった頃とは違いザンザスがどうにも我慢ならなくなる回数は減っていたが、綱吉との関係が出来上がってからもそういう時には今までどおりスクアーロが相手する事もあった。
しかし綱吉がこの世から消えて以後、スクアーロもそのほかの誰もザンザスは相手に選ばなくなっていた。
ザンザスの性格を考えると自分で処理していたとは考えにくく、ミルフィオーレとの抗争に追われていたこともあり、こういったことにはあえて感覚を遮断していたと思われる。
つまり10年後の綱吉が消えてからザンザスが初めてキスした相手が10年前の綱吉だった。
10年前の綱吉といえば、指輪戦直後のまだ14歳の子供だったはずだ。
そんな子供相手にたかが口での行為程度でこんなに煽られているザンザスの姿を見せ付けられると、さすがにスクアーロも嫉妬に近い感情を抱かされてしまう。
立ち位置も存在理由もまったく異なった綱吉といまさら張り合うつもりはないけれど、スクアーロはなんとなく今このタイミングでザンザスから綱吉の感触を消してやりたくなっていた。



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