第五幕
『再開』
ヒル魔は朦朧とする頭で考える。
自分の置かれた状況やそれに至った理由、この身に迫る恐怖と焦燥感の正体が切れ切れに頭の中をグルグルと回っていた。
そんなヒル魔の唇に、何かが触れた。
それは生暖かくて柔らかで、ゆっくりとヒル魔の唇を覆っていく。
力なく開かれた口の隙間から、何かがヒル魔の中へと進入してきた。
それはヒル魔の歯列を辿り、口腔内へと押し入ってくるから、ヒル魔はくすぐったくて顔を捩る。
「......んっ.........ぅふ...」
一瞬開放されたヒル魔の唇から吐息が漏れる。
何かはヒル魔の動きを追って、再度唇を押し開き口蓋をくすぐる。
こそばゆいような感触の中に、ゾクリ背筋を伝う感覚を覚えて、ヒル魔はまた顔を捩って何かから逃げようとした。
しかし、今度の何かはヒル魔を逃がしてくれず、逆にその舌に絡み付いてくる。
「んんっ...んっ......」
何かが与える刺激は、その動きに合わせて徐々に大きくなっていった。
口腔内を蹂躙し、舌に吸い付時には噛み付きいてくる。
ヒル魔は口腔を弄ばれる事に、だんだんと息苦しさを覚え始め、その視界は焦点を結びだした。
「......んっふ.......んぁ...やっ......やめっ....んんんー!」
意識を持ち始めたヒル魔の目前にはムサシの顔があった。
意思を持って逃げ出そうとするヒル魔の顎をムサシが掴んだ。
そうして初めて、ヒル魔は今まで自分の口腔内を蠢いていたものがムサシの舌であることを知る。
慌ててムサシの身体を押し返そうと両手を動かすが、何故だか全く動いてくれない。
いまだに震えて力の入らない身体の感覚を辿っていって、ようやく自分の両手が縛られ自由を奪われていることに気が付く。
「......んぐっ!...むむっ...んむーっ」
せめてムサシに噛み付いてやろうと思うのだが、ムサシに掴まれた顎のせいで齧るどころか口を閉じることさえままならなかった。
閉じさせてもらえない口端からは、どちらのものとも区別できないほどに交じり合った唾液が溢れてくる。
口腔内に残る唾液は気管に入りそうになるから、どんなに嫌でも飲み込まなければならなかった。
それ以上にヒル魔にとって、口腔粘膜を通して体中に響いてくる感覚が自分の身体に変化を与え始めているという紛れもない事実が何より耐えられなかった。
「.............っ」
ヒル魔は緩やかに確実に息づいてくるものを隠すように、下肢を曲げようとする。
その動きにムサシが気付かないわけもなく、当然のようにヒル魔の着物を掻き分け、足の間に手を差し込んできた。
ムサシに急所を掴まれて、ヒル魔の背が伸び上がる。
「んゃっ!?......んっ......」
たった2、3度ムサシに握りこまれただけでヒル魔は達してしまった。
「いやに簡単にいくんだな。」
「.................。」
ムサシが冷たく言い放つ。
ヒル魔は自分の口が自由になったことすら気付かず、ただただ自分の身体を恥じ入り続ける。
「.........ひっ....ぅ」
ムサシはまた手を動かし始める。
ヒル魔の身体はその動きに正直に答え始めるから、悔しくて情けなくて思わず涙が滲んだ。
「...なんッで......こんなこっ......」
「この縁談が流れると面倒だからな。ここで既成事実でも作っておけばお前だって断れなくなるだろう?」
「やっ......やだっ.........離っせ...」
このままこんなどこだか分からないようなところで、許婚にもなっていない相手にこれ以上どんなことをされるのかと思うと、ヒル魔の中に恐怖が広がる。
しかもムサシの手は巧みにヒル魔を追い上げ、2度目の解放を迫ってくる。
「.......ぁあっ...あ、いやぁッ.....」
こういったことに慣れていないヒル魔に、耐える術などあるわけもなく、またしてもムサシの手と着物の内側を汚してしまった。
「2回目だって言うのに、あっけないな。そんなに溜まっていたのか?」
「........ッ」
ムサシの卑猥な台詞に、ヒル魔は顔を背けて震えるしかなかった。
そんなヒル魔の態度が気に障ったのか、ムサシはヒル魔の顔を無理矢理自分に向けさせた。
そうして冷たく笑いながら、言い聞かせるように言葉を吐き出す。
「このまま最後までいくのと、この縁談に従うのとどちらがいい?」
「っ!!卑怯者っ......。」
「じゃぁ、このまま続けるか?」
「ひっ......くぅ...」
ムサシの手はまだヒル魔から離れていなかった。
その先を指で押されてヒル魔は小さく悲鳴を上げる。
ムサシの出した選択は、どちらに転んでも結果は同じことだった。
けれども今この状況が終わるのであればと、ヒル魔は苦渋の決断をした。
「.........わ...かった....から、もっ止めてくれっ」
「どうわかったんだ?」
「ぅあっ......断ったりしないっから、だからっ」
ヒル魔の答えとともに、ムサシの手から力が抜かれた。
ヒル魔はほっと息をついて身体の力を抜く。
そのときを見計らったかのように、ムサシの指がヒル魔の後孔へと差し込まれた。
「ぃあっ!!...やっ......なん、で?」
「従順じゃなかったらどうなるか、躾けるだけだ。」
「話が...違っ....ひぁあっ!!」
ムサシの指がさらに深く入り込んでくる。
先ほどヒル魔から出された体液が潤滑油となってその挿入を助けている。
だから痛みは殆どないものの、その異物感と圧迫感は逃れようのないものだった。
「今日は拡げるだけにしておいてやる。」
「...ぁあっ......んひっ.....」
ムサシに内壁を弄られ、ヒル魔はその異様な感触に身体を震わせた。
ムサシの指はすでに2本入っていて、その2本がヒル魔の中を進んだり戻ったりしながら、時折何かを探るように爪を立てる。
「........あっ...ひやぁっ!?......あっ、あぁ......何?」
「..........。」
出入り口近くを強く押されたとき、ヒル魔の身体は嬌声と共に跳ね上がった。
ムサシはヒル魔の問いに答えようとはせず、ただ黙ってヒル魔の様子を観察する。
ヒル魔はまた下腹部の辺りに重だるい熱が溜まっていくのがわかった。
「いやぁっ...何?........何なんだよっ、これやだっ...やぁっ」
「.........お前、自分でしたことないのか?」
「???」
ムサシは今自分がした質問の意味さえも、ヒル魔は分かっていないことに気が付いた。
ムサシは少しだけ楽しそうに笑った。
そしてヒル魔の着物を掻き分けて、その下半身をむき出しにした。
「止めッ...やっ......」
「もう勃ってるのか。これでは堪え性無さすぎだな。」
「見るなぁっ!!」
ヒル魔の白い肌に映えるように、その陰茎は濡れながら赤く充血していた。
今まで怖くて自分でも視覚での確認が出来なかったものを、ムサシによって晒されている。
ヒル魔は恥ずかしくて消えてしまいたかった。
そんなヒル魔に対して、ムサシはさらに追い詰めるようなことを言う。
「手をはずしてやるから、自分でしてみろ。」
「嫌だっ!!出来なッ......んぁッ...」
「溜め過ぎは良くない。簡単だ、覚えろ。」
「......ひっ...ぐぅ」
ムサシは片手をヒル魔の身体に差し込んだまま、その両手を自由にしてやる。
身体に自由が戻ったところで、今のヒル魔にはもう抵抗する気力も、逃げ出す足の力さえも残ってはいない。
「自分のを握れ。」
「.....ッ無理だ.....」
「このまま俺が犯してもいいんだぞ?」
「だめっ........だ」
ムサシの脅しにヒル魔は仕方なく、その陰茎に手を伸ばす。
「っ!!」
ムサシから与えられていた感触とはまた違った感じがヒル魔を苛む。
手のひらに伝わる硬さと脈打つ拍動がさらにヒル魔を辱めた。
「そのまま好きに動かせ。」
「.........っん.....んんっ」
ヒル魔はムサシがしたように、手の動きを模造していく。
一度動きだした手は止まり方を知らず、ヒル魔を高ぶらせていった。
ムサシはヒル魔が素直に従うのを確認して、体内に埋めた指を動かしだした。
「ひゃぁっ...やっ.........」
「手が止まっている。きちんと動かせ。」
「んっ...ああっ......や、もう抜いてっ!!やだっそれ...お願っ...」
ムサシの指は抜かれることなくヒル魔の中をかき乱す。
その感覚についていくのが精一杯のヒル魔は、手の内に自分自身を握り締めるしか出来なくなっていた。
「やっ...やだっ.........ひぃあっ...ぁ......」
3回目の射精に耐え切れるほど、ヒル魔の身体は慣れていなかった。
ぐったりと動かなくなったヒル魔の身体から、ムサシは指を抜き去る。
その僅かな感触に、ヒル魔は意識の無いままに軽く身じろいで、また動かなくなった。
幾筋もの涙の跡を頬につけたヒル魔の顔をムサシは眺めていた。