びぃどろ 6

第10幕
『承諾』

ムサシの家は思ったとおりの成金で、ヒル魔はそのあまりに露骨な装飾に苦笑いを漏らす。
ところが通されたムサシの部屋は意外と簡素で、寧ろ誰も使っていないのではないかと思えるくらいに必要最低限のものしか揃っていなかった。

「どうぞ、こちらでお待ちください。」

言葉柔らかい若い女中の目は、それとは対照的にヒル魔を睨み付けていた。
ヒル魔に向けられた嫉妬の目に、ムサシの人となりが窺い知れて気分が悪くなる。
出された紅茶を飲み干して、いつまでたってもやってこないムサシを待つのに飽き始めた頃、ドアの外で話し声が聞こえた。
別に立ち聞きするつもりも無かったが、声の主はかなり興奮しているらしくその内容が嫌でも耳に入ってくる。
どうやら先ほどの女中が誰かに向かって、泣きながら喚いているようだった。
好きだの騙しただのなんだのと、聞くに堪えない醜聞にヒル魔は表情を曇らせる。
きっと相手は自分を待たせている男に他ならないのだろう。
騒ぎを聞きつけたほかの使用人らしい人間が集まり、女中を引き離し連れ去っていく様子がドアを隔てたヒル魔のところまで伝わってくる。
ほんの少しの間、ドアの向こうが静かになり全てが終わったことをヒル魔は感じた。

「待たせたな。」

何を考えているのか読み取ることの出来ない表情で、ムサシが部屋に入ってくる。
ヒル魔は視線を逸らしてムサシが近寄るのを黙認した。
椅子に座ったままのヒル魔を、ムサシは高圧的な態度で上から見下ろしてくる。

「その様子じゃ、まだ入れているな?」
「......っ!!」

ムサシの不躾な言葉に、ヒル魔の白い頬は一気に赤く染まった。
赤くなった耳先にムサシが指を這わせてくるからヒル魔は思わず身構えてしまう。

「どうした、取ってもらいに来たんだろう?」
「......っその前に!!」

ヒル魔の言葉にムサシが動きを止め様子を窺う。
後に続く言葉を待たれているのが分かって、ヒル魔はいっそう言葉を詰まらせてしまう。
早く言わなけれはと焦る気持ちに喉がひりつく。

「言いたいことがあるなら、早く言え。」
「っ...この......話、受けてやるっ!!」

ムサシの言葉が起爆剤となり、ヒル魔は堅く目を瞑って言葉を吐き出した。
ヒル魔が何を言っているのかをムサシは一瞬理解できなかった。
言葉が文字となってムサシの脳内に入り込み、ようやく意味を結んだ時ムサシは怪訝そうにヒル魔を眺めていた。

「今の騒ぎ、聞こえてなかったわけじゃないだろう?」
「......テメェがそういう人間だってのは、どうだっていい。」
「どうもいい男がお前の趣味か?」
「うるせぇっ!!何度も見合いすんのが面倒臭ぇのはこっちだって同じなんだよっ!!どうせ金持ちと結婚しなきゃならねぇんだから相手なんか誰でもいい。だからテメェに決めてやる。」

半分は本当で半分は嘘の言葉を、ヒル魔は一気にムサシにぶつける。
一生添い遂げる相手が誰でも良いわけは無い。
しかし、他人の子供であるヒル魔を今まで育ててくれた両親を救うために、金持ちと結婚しなければならないことは逃れようの無い事実であった。
また、ムサシとの縁談を断ったところで、ヒル魔は自分の身体を穢す次の相手が現れることを知っていた。
どうせ穢されるのならば、ムサシ一人で充分だとヒル魔は嫌がる気持ちを無理矢理押さえ込んだ。
そして、互いに割り切った関係なのだとムサシに宣言することで、ヒル魔は少しでもムサシの優位に立とうと足掻いていた。

「.........なら話は早いな。」
「なっ...離せっ!!」

ムサシはヒル魔の腕を掴み、強く引き寄せそのままベッドへと放り投げた。
大きなベッドはヒル魔の身体を優しく包みこみ、身体にかかる衝撃を和らげてくれる。

「何しやがッ」

ヒル魔がベッドから飛び起きるよりも早くムサシはその上にのしかかり、もがく身体を体重で制圧する。
押しつぶされる苦しみの中で、ヒル魔はムサシを見上げて背筋を凍りつかせた。


第11幕
『策謀』

ヒル魔の耳元へとムサシは唇を寄せ、笑いを押し殺した口調で楽しそうに信じられない言葉を囁いた。

「ここはお前にとって敵陣だろう?そんなところで出されたものを簡単に口にするもんじゃないな。」
「っ、何言って...?」
「身体、熱くなってきてるだろう。」
「テメェッ!!」

もともと昨日から内部に押し込められたアメジストによって刺激され続けた身体である。
常に熱を孕んでいることは、ヒル魔にも分かっていた。
しかしムサシの言葉は、もっと別の意味を含んでいる。

「紅...茶?」
「さぁ、どうだろうな。」
「わざとっ...待たせやがったな......」
「どうでもいいだろう。お前はもうこの話を受け入れたんだからな。」
「嫌だっ!!やっ...んっ」

ムサシはヒル魔の白く細い首に唇を当てた。
生暖かい湿った感触にヒル魔の肌は粟立っていく。
まるでナメクジが這った後のようにムサシの舌が触れた箇所から熱が生まれ、ヒル魔の身体を追い上げる。

「...ひぁっ......離っせ...やっ」

少しの着乱れも無く堅く締められた胸元がムサシによって無理矢理開かれ、その白い肌を晒された。
中途半端に引き下ろされた着物に絡まり、ヒル魔の両腕はその動きを封じられてしまった。
首筋からムサシの舌が離され、濡らされた肌は外気に触れて身を振るわせる。
一瞬感じた寒気のためか、それとも身の内にじわじわと広がる熱のせいなのか、ヒル魔の胸の飾りが立ち上がり始めた。
その様子をムサシは楽しそうに眺めながら、視線でヒル魔を陵辱していく。

「ほんの数日で随分といやらしく育ったものだな。」
「違うっ!!」
「ああ、元々淫乱だとでも?」
「ふざけっ、んなぁっ...っく...」

小さいながらも堅く尖った胸の先に、ムサシが舌を這わせた。
熱くざらついたその感触は、痺れとなってヒル魔の身を縮こませる。
舐め上げられ歯を立てられるたびに、ヒル魔の小さな尖りは赤く色づき、触覚を鋭敏にさせていく。

「やぁっ......吸いっつくな...ぁ、んん」

触れられていないほうの飾りも、片方への刺激に反応して堅く赤みをさし始める。
無論ムサシがその反応を見逃すわけもなく、そちらは無骨な指に挟まれ捩じ上げられる。

「ぅひっ...ん......やめっ」

ヒル魔はかろうじて自由になる肘を曲げ、その刺激に耐えようとムサシの衣服を掴み握り締めた。
それでも逃しきれない快感はヒル魔の腰へと落ちていく。
徐々に熱を上げていく身体は下半身へも伝わり、その変化を隠そうとヒル魔は両膝を擦り合わせながら腰をシーツへと押し付ける。
ムサシの下で無理に足を動かし腰をくねらせた結果、着物が肌蹴て足が露わになってしまう。
ムサシは腹に当たり始めた硬い感触に気付き、薄く笑う。

「やっぱりただの淫売か。」
「ちが...ぅ」
「まだ触られてもいないくせに、こんなにしててもか?」
「ひああっ!!...あっ、やっ......触ん...なっ」

両腿の隙間から差し込まれたムサシの手は、易々とヒル魔の敏感な肉を掴み取る。
すでに硬く立ち上がったその先からは雫が垂れ、ムサシはそれを塗りこむようにヒル魔の陰茎を扱き追い詰める。

「やめっ...やっ......ぁっひ...あっ...」

ヒル魔の全身がぶるりと震え、ムサシの手を簡単に汚していく。
あまりに簡単に達してしまった事にヒル魔は羞恥を隠しきれず、真っ赤になって目を瞑ったまま唇をかみ締めていた。

「そんなに我慢できないのか?」
「.......っ」
「昨日やったアレもまだ咥え込んでいる様だし、この身体は思った以上に好き物のようだ。」
「糞っ!!だまっれ...ぅう......」

ムサシはヒル魔の非難など気にかける様子もなく、濡れた指をアメジストの埋め込まれた孔へと伸ばしていく。
指先に触れた入り口は小さく盛り上がり、柔らかく熱を持っていた。 ムサシが少し押してみるだけで、簡単にその口を開ける。

「随分とほぐれているようだが、自分で掻き回したりしてみたのか?」
「......っるせぇ...はやっく、取...れよ...」

ヒル魔の可愛いげのない態度に対するお仕置きだとでも言うかのように、ムサシは無造作に指を差し込んでいく。
ムサシは途中わざと内壁を引っかき押し広げて、そのたびに跳ね上がるヒル魔の反応を確認する。

「うっく.....んんっ...くぅ」

内壁の柔らかさを楽しむムサシの指先に硬い異物が触れた。
いまムサシの指を受け入れているところは、元々蠕動運動によって排泄することを目的にした器官である。
本当であればアメジストのような異物を吐き出すことなど造作もない。
しかしヒル魔の羞恥心がそれを拒み今この瞬間まで、この無機質な石を掴まえていたのだった。

「指一本では掴まえられないな。」
「えっ?やっ...アッ...やあぁっ!!」

石に触れていた指をいったん爪の根元まで引き抜き、ムサシは本数を増やしてまた柔らかい体内に侵入していく。

「ああっ、嫌っ...拡げっなぁ......」
「掴めないんだから仕方ないだろう。」

ムサシは平然と嘘をつきながら、ヒル魔の内壁を弄り犯す。 そうして肉を掻き分けながら、目的のアメジストまで易々とたどり着いた。
再び石に指先を触れさせたまま、ムサシの目が妖しく光る。

「な...にしてやがる......早くっ、取り出せっ......」
「今やってる。」
「ひっ!?やっ...何?奥っ!!」

ムサシの指はいったん掴みかけた石を滑らせ、その奥へと押し込んだ。

「悪い、指がぬめって上手く掴めない。」
「いやぁっ......アッ...早く、出っせぇ...」
「だから今やっている。」
「ひあっ...ああっ......んはっ」

言葉とは裏腹に、ムサシの指は石を奥へ奥へと押しやっていく。
その刺激に、開かれたまま空を見つめるヒル魔の目からは涙が溢れ出す。

「ぁヒッ...ひぅっ、んっ」
「......ダメだ、指が届かない。」
「そっ...なぁ、やだっ、取って!!取れっ...もう...取ってぇっ!!」

ここに来れば何とかなると思ったのに、あと少しの辛抱だと自分を慰め、恥ずかしさと屈辱に耐えたのに、とヒル魔の気丈な心が崩れ始める。
ヒル魔の頭は混乱しムサシの嘘にも気が付かず、いつの間にか目の前の男に泣き縋っていた。