<影絵三枚目>
気持ちが重たいと足まで重たくなるものなのかと、ヒル魔はため息混じりに顔を上げる。
たいていの人間は学校なり仕事なり行っている平日の真昼間。
日はまだ高く、太陽の苦手なヒル魔には拷問に近い状況であった。
それでも日が沈むまであの部屋にいてまた冷たくあしらわれるかと思うと、1秒でも早くそこから離れたくなり飛び出してきたのだった。
「………?………タケ、クラ?」
ふと上げた視線の先で目に付いた工事現場。そこにいたのは間違い無く大好きな人の姿であった。
ただ、自分が知っているその人とはあまりにかけ離れた様子に声を掛ける事が出来ない。
自分が知っているタケクラは、こざっぱりとしていてまるでホストのようで、肉体労働なんかとは程遠い。
それなのに今目に映るタケクラはどこからどう見ても大工か何かにしか見えない。
頭に巻いたタオルも、生えているのが当たり前のような不精ヒゲも何もかもが別人のようで、気が付いた時には思わずその場から逃げ出していた。
その日の夕方、ムサシは祈るように自宅のドアを開けた。
毎度の事とはいえ、タケクラが連れこんだ人間が逆上して室内で暴れることもあり、その後始末をする羽目になる事に腹が立つ。
軽く息をついて部屋に入ってみると、特に変わった様子は無く荒らされた形跡も無い。
もしかしてまだ居座っているかもと軽く見回してみたがその形跡も無い。
面倒な事にならずに済んだ安堵が疲れた身体に染み渡る。それと共に感じる一抹の寂しさに苦笑が浮かぶ。
「また同じことの繰り返しか。」
タケクラが連れてくる人間は皆、ムサシの存在を受け入れきれずに逃げ出していく。
タケクラが一体何を考えて性懲りも無く次々とこの部屋へ連れ込むのかは解らないが、それに付き合うこちらの身にもなってほしいと何度願ったことか。
明日は何も起こらないようにと目の前にいない相手に頼みながら徐々に近づいてくる逃れようの無い眠気に身を委ねる。
ムサシが眠りについたと同時にタケクラが目を覚ます。
そして目ざとく部屋の隅に転がったごみのような紙切れを見つける。
そこに書かれたメモに軽く舌打ちして身支度を始めた。
「いつも勝手に追い出して、フォローする身にもなれってんだ。」
ムサシがそうであるように、タケクラにもムサシへの文句がたくさんあるようだった。
今までの人間ならこれで終りにしていたが、今回は何となく関係を切りたく無い気がして、三ヶ月間通いなれたいつもの場所へ足を向ける。
今度こそは失敗しないように、慎重に事を運んできたつもりのタケクラであった。
少しづつ、ヒル魔の身も心も自分に引き寄せていき、大概のことでは自分から離れられないように調教してきた。
だから人気のほとんど無くなったショッピングモールのベンチで一人座りこむヒル魔を見つけた時には自分の腕の良さに少しだけ満足感を覚えた。
「…………妖一。」
「っ!?」
ヒル魔に気づかれないように注意しながら出来るだけ近くに忍び寄り、そっと声をかける。
驚いたヒル魔が逃げ出す前に捕まえて腕の中に閉じこめる。
「……離ッ………っ!!」
腕の中でもがき暴れるヒル魔を建物の隙間に連れこんで、大人しくなるまで口付ける。
「………んやっ…はっ………」
「落ち着いたか?」
そう言って覗き込んでくるタケクラとは視線を合わせないようにながらヒル魔が口を開く。
「…っ、何なんだよッ!!遊んでんなら他の奴にしろっ!!俺はこういうの好きじゃないんだ………」
「妖一?」
「うるさいっ!!名前で呼ぶなッ。」
「悪かった。どうも昼間の俺は機嫌が悪くてな。いつも後で反省するんだが一向に治らないんだ。勘弁してくれるか?」
そう言って少し強く抱きしめてくるタケクラに少しだけ縋りつく。
タケクラの言葉が本当か嘘かなんて見抜けない自分に腹が立ちながらも、ヒル魔はまたタケクラに絡め取られていく自分を感じてため息をつく。
「………思いっきり優しくしてくれたら、信じてやってもいい。」
顔から火が吹くかと思うくらい恥ずかしいセリフを口にしてしまい俯いたままのヒル魔を無理やり上向かせまた口付けをかわす。
「じゃぁ、優しくするからここでやってもいい?」
「っ!?何でそうなるんだっ!!この糞ホスト!!………っ〜」
タケクラの手がシャツの下に入りこみゆっくりと背中をなで上げていく。
ヒル魔はそのくすぐったい感触から逃げたくて思わず更に強くしがみつく。
耳の上のほうでクスリと笑われた気がしてまた恥ずかしさがこみ上げる。
腕の中で震えるヒル魔を楽しみながらムサシはもう一方の手を腰からズボンの中へと差し入れていく。
「……っ、ちょっ!!ホントにここでやるのか?………ふっ…んん……」
「中、まだ昨日のが残ってるみたいだな。きちんと教えたのにまだ上手く出来ないのか?」
「………ぅるさっ……やっ……」
昨日の残滓のおかげも手伝って、ヒル魔の体内はとても柔らかく潤んでいる。
タケクラの指を三本飲みこんでも傷つく事も無く、ぬらつきながら絡んでくる。
「もうこんなになってるなら大丈夫だな。後ろ向いて壁に手をついてみろ。」
「ぃやっ……できなっい……やぁっ!!」
タケクラはわざと乱暴に指を引きぬくと、無理矢理ヒル魔の体勢を変えて下着後とズボンを引き降ろす。
「………やさっ、しくしろって……言ったの…に……」
「するぞ?ヒル魔がきちんと言う事きいてくれたらな。」
「んァアッ……!!」
後ろからゆっくりとタケクラが入ってくる感触に背をしならせて耐えるヒル魔であった。
「……んはぁ、あっ……ふぁっ………こっんな…嫌ァ…」
「なんで?優しくしてるのに…」
「……あっぁ……足りなっ…もっとぉ……」
わざとゆっくりと動かされる緩やかな刺激に、ヒル魔は焦らされ屋外である事も忘れて懇願する。
そんなヒル魔の痴態に笑みを浮かべながらタケクラはまたゆっくりと残酷にヒル魔を苛んでいく。