ドッペルゲンガー 8

<影絵八枚目>

「好きになってもらいたいんだろう?本気かどうか見せてみろよ。」

先程までの柔らかな雰囲気とは打って変わり、ムサシから受ける視線は鋭く肌を刺すようにヒル魔を縛り付ける。
どこで何を間違ったのか、ヒル魔には全くわからなかった。
ムサシがヒル魔に好意を寄せ始めている事など本人は全く気付かず、今の状況がタケクラに対する嫉妬からくるものだとは夢にも思わない。
ただムサシの言葉を鵜呑みにして縋るしか、今のヒル魔には方法が無かった。

「………っ」

ヒル魔はいつまで待っても触れてこようとはしないムサシの首におずおずと両腕を回し、唇を重ねる。
固く閉ざした唇はそのままムサシの心のようで、また胸の奥が疼き始める。
ただ重ねるだけの唇を開けてとムサシに頼むようにその輪郭を舌でなぞる。

「……んっ、ふっ………あっ?ムサシ?」

突然、ムサシに腕をほどかれ2人の間に距離が生まれる。
座りこんだムサシを見て、やはりダメかと俯きかけるヒル魔の頭をムサシは乱暴に掴んで自分の股間へと持ってきた。

「……っ何?」
「自分でご奉仕してみろよ。上手く出来たら俺の気持ちも揺らぐかもな?」

信じられないと目を大きく見開いて見詰めてくるヒル魔に耐えきれず、ムサシはまた乱暴にヒル魔の頭を押さえつける。
始めこそ押さえつけられる力に反発していたが、すぐにヒル魔は諦めたように力をぬいてムサシのズボンを寛げだした。
そしてまだ何の興奮も示していないムサシ自身を引きずり出して口に含む。

「んっ・……むぅ………」

いつもタケクラにされていた行為を思い出しながら、それになぞらえて舌を動かす。
拙いながらもその動きに煽られて、ムサシのモノは少しづつ形を変えてヒル魔の口腔を犯しはじめる。
横から歯を立てずに吸いついたりその先を舌でまさぐる内に、とても全てを口に含む事が出来なくなってヒル魔の動きが止まる。

「止めるな、続けろよ。」

頭の上から冷たく落ちてくる言葉に身を竦めた瞬間、頭を押さえこまれて無理やり口にねじ込まれる。

「んぶっ!!…………んっ……ぐぅ…」

きつく髪を掴まれムサシの良いように乱暴に揺さぶられる。
のどの奥を刺激されて吐き気と眩暈で涙が滲む。
口腔内で熱く脈打つ棒が更に膨らみ、出されると覚悟した時に頭をを引き上げられ、その顔にぶちまけられた。

「げほっ!!何しやがるっ!!糞っ!!」

ヒル魔は顔から流れ落ちる白い体液に顔をしかめながらムサシを睨みつける。

「良い面だな。よく似合ってるぞ。」

着ていたランニングで顔を拭うヒル魔にむかってムサシは厭味ったらしく笑う。

「それ、使ったことあんだろ?」
「っ痛ぇなっ!!」

そう言ってムサシは顔を拭くヒル魔に何かを投げつける。
その何かを手に取ったときヒル魔の顔が更にしかめられた。

「…………どういう意味だ?」
「まさかこれで終りだなんて思ってたわけじゃないだろ。それ使って自分で準備して出来たらここに跨って気持ちよくさせてみろ。」
「……………最低だな……お前。」
「その最低な奴に好かれたがっているのは誰だよ。」

ヒル魔は手の中の潤滑クリームに目をやって躊躇する。
こんな事は絶対にやりたくないのに、やらなければどうなるのかが目に見えて強く拒絶できない。

「…………絶対…こっち見るんじゃねぇぞっ……」
「はぁ?見ないわけ無いだろう。なんでやってんのかを思い出せよ。」
「………っ」

ヒル魔は両膝をつき、せめて自分の視界から見えないようにとムサシに背を向けて手の中の蓋を開ける。
痛いほど背中に突き刺さる視線に気付かない振りをして指先に付けたクリームを後孔へ塗りつけた。

「っ…はっ……ぁ」

息を吐きながらヒル魔は自分の指を奥へと挿し入れる。
指から伝わる感覚と体内から感じる異物感に意識を苛まれながらその指をゆっくりと動かしていく。
出きるだけ敏感な部分に触れないよう注意しながらクリームを少しづつ塗りこんでいく作業にその内腿は震えヒル魔自身も反応を返し始める。
そんな自分の姿にあさましさを覚えてもう無理だと叫び出してしまいそうになる。
しかしきっとそれで許してもらえるはずも無く、もしかすると更に怒りを買う事になるのではないかと恐怖に身が竦みこの行為がやめられない。

「まだかかるのか?そろそろ交代の時間がきそうなんだがな、それともわざとか?」
「っ……ちがっう…」
気が付くと辺りは暗くなりかけ、ムサシの顔も見えにくくなっていた。
ここで終わらせるわけには行かない事もわかっていたので、ヒル魔はまだほぐしきれていない身体をムサシに差し出すことにした。

「自分で入れて見せろ。」
「………。」

ヒル魔は黙ってムサシを軽く擦り上げた。
ムサシのモノは軽い刺激で簡単に大きくなりいつでも使える状態でヒル魔を待っている。
その大きさに潤滑クリームだけでは心もとなくなり、仕方なく再度そこへ唇を落とす。

「んっ………」

ヒル魔は今から刺し貫かれるモノをゆっくりと舐め上げ自分の唾液を染み込ませて、挿入が少しでも楽になるようにと努力する。
ムサシの反応などに気を向ける余裕も無く作業に没頭する。

「っ痛ぅ!!」
「もういいだろう?」

ムサシがヒル魔の髪を掴んで自分から引き剥がす。
さっさと入れろと要求するムサシに弱々しく睨みつけると、ヒル魔はムサシに背を向けて跨ぐと膝をついた。
そして今まで口にしていたモノに手を添えてゆっくりと腰を下ろす。

「…っ!!んぐぅ……はっ…うぅ……」

予想以上の大きさに身体が怯んで上手く入っていかない。
焼けるような痛みが下から這い上がって着てヒルマを苦しめる。

「んんぅ………はぁっ!!……いっつぅ…くぅ!!」

それでもなんとか一番大きい部分だけは捩じ込むめた。

「まだ先しか入ってないぞ、ほら?」
「っやぁっ!!」

肩で荒く息をするヒル魔の腰を掴み、ムサシが無理矢理ひき降ろす。

「いったぁ………。」
「きちんと用意しなかったお前が悪い。」

切れはしなかったものの、その痛みは涙を流させるには充分で、そんな様子を見せたくないヒル魔は背を向けていたことに息をつく。

「少し手伝ってやったんだから、ここからは自分でしてくれよ?」
「っ!!うるっさい…わかって…る」

そう言うとヒル魔は諦めたように腰を動かし出す。
まだ繋がっている部分からは引き攣れるような痛みしかあがってこなかったが、それでも可能な限りムサシへの奉仕が始まった。

「……はっ…ぁ……んんっ………」
「……っ!!」

ゆっくりとゆすられる腰ときついほどの締め付けに少しづつ煽られていく自分にムサシはきつく眉を寄せる。
ヒル魔にとってはきっと快楽よりの痛みの方が大きくてとても楽しめる状況では無いのだと思う。
それなのに全てを強制して更にヒル魔を苦しめる。
本当はヒル魔を苛めるのが目的ではなく、ヒル魔はお前のものじゃないとただタケクラに見せつけてやりたかっただけであった。

「こっち向けよ。」
「……やぁっ…無理っ…ぃ……」
「出来るだろ?少し抜いて回るだけだ。」
「………くぅっ………」

ムサシの無理な注文にも必死で答えようとするヒル魔に胸が痛む。
ヒル魔も、腰を動かしムサシを煽るうちに痛みの中から快楽が生じつつあった。
もともと情事に慣らされた身体だった事もあり、一度火がつくと痛みではなくこの快楽のみを貪ろうとする。

「んはぁっ!!………あぁっ………はっ……」

向きを変えようとするが上手く行かず、仕方ないのでいったん抜いてから向かい合わせになってまた腰を下ろす。
ムサシの顔を見るのがつらくて目を合わせないままヒル魔はまた腰を振り出した。

「んっ、んっ、ふぁっ……」
「くっ……」

2度目の挿入は簡単で、ムサシもゆっくりと追いたてられていく。
徐々に時が近づくのを感じながらムサシはヒル魔の腰に手を伸ばし、自分の良いように引き降ろす。

「っ!!ひぃっ……アッ……ぁあっ…んんっ」
「っ!?」
「いやぁっ!!………あっつぅ……」

ヒル魔のことは考えずにただ自分の欲望をその体内に吐き出す。
ヒル魔はまだ中途半端に高められているだけで思わず腰をまたゆすり始める。
グプグプと粘着質な音を立ててその隙間から精液が漏れ出てくる。
その気持ち悪さに身を震わせながらも快楽を追い求める為に更に身体をくねらせる。
その為ヒル魔は少し冷静さを失い、下にいる男の様子が変わっていることに気が付いていなかった。

「っ……何を…しているんだっ!!」
「…ふえ?……あっ…んああっ!!」

ヒル魔は男の腹に欲望をぶちまける。
身体は脱力し、上手く息もつけない。
途切れ途切れの呼吸の中、ヒル魔は羞恥と後悔を感じながら相手の名前を呼ぶ。

「………タケ…クラ?………」