酔い錆 -中編-

ムサシの指と舌によって、ヒル魔の身体が否応なしに開かれていく。
既にヒル魔の後孔は固さを失い、取り残された果実のように熟しきっていた。
ムサシが弄ることを止めても、いつもなら固くすぼまっているはずの入口が、今はムサシの唾液に濡らされ、赤く晴れ上がりヒクヒクとうごめくことさえしてみせる。

「なんか凄くいやらしいな、ヒル魔のココは」
「......うるっさ...い......ンッ......あっ」

またムサシが指を一本突き立てる。
ヒル魔の身体は指を体内に深くくわえ込んでみても、痛みを感じることはすでに無い。
代わりにいたたまれないほどの物欲しさが身体を渇かせていく。

「ひぁっ......あっ.........拡げっ......なぁ」

ムサシの指が中で曲げられ、内壁に鉤爪のように引っ掛けられて入口を開かせ、熟れた果実に指を入れて握り潰すような音と共に内壁の肉色が現れる。
ムサシは拡げられた隙間からまた舌を差し込み、充血した襞を丁寧に舐めとっていく。

「やぁっ......はっ、あ.........ンッ、んぅう......」

ムサシの舌と指が動く度に、ヒル魔の身体は震え、足を跳ね上がらせた。

「なあ、ヒル魔。」
「............やっ、ぁ......な......にぃ?......ンハッ」
「俺ってもしかして、お前の事好きかもな」
「............は?」

ムサシから与えられる欲望に任せて、浮ついていたヒル魔の思考が一気に整列し始める。

「何、言って.........だ?」
「あー。だってよ、男同士なのにこんだけ犯りたくなるなんて、気持ちがなきゃどうにも説明つかねえ」

ムサシの言葉は知らず知らずヒル魔の心を冷たくさせていく。
何を今更、とヒル魔は叫びたくなった。
あれだけ近くにいたのは誰だったのか。
共に時間を過ごしたのは、はたしてどのくらいだったのか。
何度も何度も重ねられた行為の意味は、何だったのか。
ヒル魔はこんな気持ちを抱えても、まだ続きを乞う浅ましい身体を呪いながらムサシを睨み付ける。

「......オイ、指...抜けっ.........」
「んー?どーした、ヒル魔ちゃん。」
「っ!?い...いからっ......離れっやがれ!!この糞酔っ払いジジイがっ!!」

ヒル魔はうまく動かない身体を、無理矢理捩ってムサシを突き放す。

「っ...、何すんだよ!!焦らしてるのか?」
「ケッ、ざけんな。気のせいだよ」
「ああ?何言ってんだ?」

「テメェの中に好きなんてあるわけねぇだろうがっ。気持ち良けりゃいいだけじゃねぇか!オレもテメェもよっ!!」

ヒル魔の口から出る言葉は、酔って思考を無くしかけたムサシには届かず、我が身ばかりを傷付けていく。
今まで信じていた気持ち全てがヒル魔一人の独りよがりだった。
そのことをムサシにだけは悟られたく無くて、つい余計なことばかり飾り立てて、傷んだ心を隠していく。

「そうなのか?」
「ああ、そうだよ。気持ちよけりゃ何でもどうでもいいんだよ」
「...そうか、そうだな」

酒に酔った虚ろな表情で、『好き』という発言をいとも簡単に引き下げてしまうムサシの様子に、ヒル魔はいらつきまた余計な言葉を吐き出してしまう。

「......その証拠に、今日はオレが気持ち良くさせてやるよ。オレのいいようになっ!?」

ニヤリと笑う自分の顔がおかしく歪んでしまうのをヒル魔は止められない。

「へぇ、それは楽しみだ」

ムサシがヘラヘラと笑いながらヒル魔を見つめてくる。
既に『好き』なんて感情はムサシの中から消え去っていて、ただの欲望のはけ口でしか無くなったこの身体を見つめられることは、ヒル魔にとって堪え難いものだった。

「オラッ糞ジジイ、そこに寝そべりやがれ!」

ムサシの視線から逃げたくて、ヒル魔は指示を出す。
ムサシはその命令に従順に横たわった。
ヒル魔は無言で膝をつき、ムサシのズボン前だけを寛げて、いつも自分を犯す道具を取り出していく。

「何?そのお口でご奉仕とか?」
「......黙りやがれっ」

上機嫌で茶化してくるムサシの姿に腹がたって仕方の無いヒル魔は軽く歯をたてる。

「いっ......」

急所への悪戯に驚いたムサシは跳び起きて、ヒル魔の髪を掴んで上向かせる。

「っ…手ぇ離せっ、この酔っ払いが!?ぶっ!?」
「気持ち良くするんだろ?きちんと出来るか見ててやるよ」
「.........っ、ぐぅ」

ヒル魔はムサシに頭を押さえ付けられ、喉元までそのモノを押し込められた息苦しさと嘔吐感に、唸り声を上げながら上目使いに睨みつける。
頭を押さえ付けてくるムサシの手の力は一向に弱まらず、ヒル魔は悔しそうに目を伏せた。
するとムサシは力を弱めて、先を促すかのようにヒル魔の頭を撫でてくる。

「今日はヒル魔が最後までしてくれるんだったな。こっちの準備も頼むぞ」
「...............」

ムサシが頭を撫でる仕種に合わせて、ヒル魔は唇を緩めて舌先でなぞるようにムサシの形を舐め取っていく。

「......へぇ、どこで覚えたんだ?自分が良ければ誰でもいいんだったよな」
「......うるせえ」

ヒル魔はさっき自分が言った憎まれ口を逆手に取られただけなのに、ムサシの言葉に酷く痛む胸を煩わしく感じた。
そうしてヒル魔の動きが止まるとムサシがまた茶化してくるから、つい強がってしまう。

「ん、もう終わりか?」
「テメェのなんざ、適当に濡らしときゃいいんだよっ!たいしてやらなくても、直ぐに興奮しやがるな、この糞エロジジイ」
「...そっちはさっきので充分ほぐれているしな?」
「...っ!?黙れっ」

ヒル魔は疼きの治まらない身体を抱えていることをムサシに見抜かれて、羞恥で耳先が染まっていく。

「いいか、今日は絶対達くんじゃねぇぞ!!」
「…なんで?」
「……思い知らせてやる」
「しらせてもらいたいもんだな、その身体で」

酒に飲まれて饒舌になるムサシを無視して、ヒル魔がムサシの上に跨がった。

「手伝ってやろうか?……ってぇ」

そう言ってヒル魔の尻に手を這わせてくるムサシの手を、ヒル魔はたたき落として睨みつける。

「黙って待ってやがれ!」


ヒル魔は跳ね上がってくる胸の鼓動を落ち着かせようと、深く息をつきながらムサシのモノに手を添える。
ヒル魔の手から伝わる緊張にムサシは無意識に笑ってしまう。

「…………っ」

ムサシのぬめる先が、ほんの少しだけヒル魔の入口に触れた。
たたそれだけで、ヒル魔の身体は震え、内壁はヒクリとうごめきその口を開く。

「……うっ…く………」

ヒル魔は息をつめながらゆっくりと腰を沈めていく。
ヒル魔の身体は、さらに貪欲に深くまでムサシ自身を飲み込みたいと収斂する。
しかし実際に体内に収めていくと、その圧迫感に身が竦み、呼吸と身体の動きが噛み合わず、ムサシの陰茎はまだ半分残された状態でヒル魔の動きが止まる。

「威勢がいいのは上の口だけか?舌の口はまだ半分も食べ残してくれてるんだけど、食べ残しはいけないよな、妖ちゃん?」
「......くっ!!うるせぇ!」

ムサシの言葉に思わず頭に血が上ったヒル魔は、ムサシのその横顔を張りあげようと腕を振り上げた。

「何なら食べるの手伝ってやるよっ!!」
「なっ!!ひあっ、ぁあっ!?」

一瞬の隙をついて、ムサシが強引にヒル魔を自分の腰へと引き摺り下ろしていく。

「くはっ......あっぐぅ......はぁ、はぁ、」

一気に突き立てられ根元まで咥え込ませられた身体は、予想以上にヒル魔の意識を攫おうとした。
何とか堪えてみたものの、息は上がり言葉も出せない。
ヒル魔は自分の体内で、何か別の生き物が熱く脈打ち内側から侵食を始める感覚に眩暈を覚える。
そんなヒル魔の様子をムサシは楽しそうに眺めながら、またヒル魔を追い詰めるような言葉を吐き出す。

「さぁ、せっかく手伝ってやったんだから、ここからは一人で頑張れよ」
「.........言っ...われなくても......してやるよっ!!」

まだ屈さないでいるヒル魔の表情に満足したムサシは、ヒル魔を腹に乗せたまままた寝転がった。

「......っ.........」

そんな些細な動きにも、ヒル魔の身体は敏感に反応して快感を集めていく。
このままいつものようにムサシに身を委ねて、全てわからなくなってしまえれば、どんなに楽になれるかとついヒル魔は考えてしまう。
でも下のムサシはヒル魔の言葉を鵜呑みにしてただ受身で待っているだけだった。
ヒル魔は仕方なく、ゆるりと腰を動かし始める。

「...んっ、......は...ぁ......んぅ、んっ」

少しづつ少しづつ、前後に揺するだけだった腰をわずかに浮かして、ムサシの陰茎を内壁に擦りつけていく。

「......もうちょっと、扱いてくれたほうがいいんだけどな?」
「...あっ......うるっ、せ......今...やってや...ンアッ.....」

ヒル魔は上下の動きによって不安定になった身体を支えるために、ムサシの腹へと手をつきさらに激しく腰を揺らす。

「あ〜、.....それ......いい感じ......」
「はっ......は....っく......うぁ............」

ヒル魔は自分の動きがムサシを追い詰めていくのを体内で感じる。
いつもより身体の力が抜け切らないのは、与えられる側から与える側へと移っているからなのかとヒル魔がぼんやり考えていた時に、不意にムサシが動いた。
ムサシの手が、いつの間にかヒル魔の陰茎を握り締め弄っていく。
すっかり油断しきっていた箇所からの刺激によって、ヒル魔の内壁は大きく収縮して中のムサシを締め付ける。

「ひあッ!?......あっ......なっ......離っせ......」
「うあっ、この締め付けが...たまらん...っ!?」
「...ひっ!?」

ヒル魔の中でひときわ大きくなったムサシが熱い精を吐き出す。
いきなりのことにヒル魔は身を竦ませて耐え忍んだ。

「.........は...ぁ、......テッメェ、誰が達っていいっつった、ああっ!?」
「.........ン〜.........グゥ........」
「............マジかよ......寝やがった...のか?」

ヒル魔に咥え込まれたままムサシはスースーと寝息を立てていた。
かなり酔いが廻っていたので仕方の無いこととはいえ、ヒル魔は一人取り残されたことにショックを受けている。

「......自分だけ達きやがって、こっちはまだなのに.....どうしろってんだ、これ.....」

ヒル魔は自分の身体を見下ろして深くため息をつく。
このまま繋がっているのも馬鹿馬鹿しくて、そっとムサシを起こさないように自分から身体を離した。

「......んぁっ......は...ぁ...」

栓がはずされた途端にあふれ出てくるムサシの残滓に眉をひそめながらも、ムサシの身体を整えてからヒル魔は一人で処理するために浴室へと向かった。