Io insegno amore U




2)
ザンザスの家とも言えるヴァリアー本部では突然の珍客に、驚きのあまり凄腕と恐れられているはずの暗殺集団が声も出せないでいた。
目の前にある顔は以前よりも丸みを失い、相変わらずなにこやかな笑顔の裏には昔には感じられなかった威圧感が存在している。
確実に成長を続ける綱吉を前に、ヴァリアーの面々が口を開いた。

「ねぇ、ウチは9代目の直属だって知ってるわよねぇ? 10代目がいったいなんの用なのかしらぁ?」
「その男が10代目などと我々は認めぇっンオブッ!!」
「う゛お゛ぉいっ!! ややこしくなるからテメェは黙ってろぉっ!!」

スクアーロはレヴィを殴りつけながら綱吉を睨みつける。
過去の因縁があるとはいえ、いまさらその事で目の前に現れた綱吉をヴァリアーがどうこうしようとは思っていない。
問題は過去ではなく現在の綱吉が持つザンザスへの異常な執着だった。
綱吉の行動はいつもザンザスを苛つかせていた。
そのとばっちりは癇癪にも似た暴力行為として主にスクアーロを中心とした周囲の人間に向けられる。
もしも綱吉の言うとおりにザンザスと対面させたとして、その後の甚大な被害を考えるとどうしてもそれだけは避けたかった。

「いますぐに伝えたい事があって、ザンザスに逢いに来たんだ」
「……だったらボスに伝言しといてやるぞぉ」
「ごめん、オレが直接ザンザスに言わなきゃ意味がない事なんだ」
「う゛お゛ぉいっ、今のはお伺いじゃねぇ。 伝言ってのは決定事項だぁ」
「でもオレのほうも自分で伝えるってのが決定事項なんだ」

暗殺者としては一流以上に超一流のスクアーロを相手に一歩も引かず対峙する綱吉の成長ぶりに、スクアーロは内心舌を巻く。
お互いにどちらかが折れるまでは埒が明かない状況でスクアーロは睨みを利かせ、対する綱吉は無遠慮な笑顔を振りまいていた。
いまだに下腹部を抱えて身もだえるレヴィと今の状況を面白そうに眺めているルッスーリアでは状況を変えることは期待できない。
スクアーロが命をかける覚悟で剣を抜こうかと悩んでいたとき、能天気な笑い声を上げながらベルフェゴールが皆の集まったフロアへと現れた。

「うししし、ボスが会うからそいつを連れて来いってさぁ」
「う゛お゛ぉいっ! 何でこいつが来てるのをあいつが知ってるんだぁっ!!」
「賢い王子が教えてあげたから」
「う゛お゛ぉいっ!! 後で殴られるの誰だと思っていやがるんだぁっ!?」
「どうせ鮫だろ、王子じゃないから別に気にしなーい、うしししししっ」
「あらぁ、ベルちゃんったら相変わらず良い仕事するわねぇ」
「う゛お゛ぉいっ!? どこが良いんだぁっ」

スクアーロはおもわず仲間に怒鳴りつけた。
その隙を突くように綱吉が動きだす。
あまりにあっさりとスクアーロの横をすり抜けた綱吉の実力に、その場にいた全員が目を見張った。
一瞬の緊張をごまかすように綱吉が明るく話しかける。

「じゃあザンザスのお許しも出たし、オレ行くね」
「ししし、後ろから刺しても良いなら王子が案内してやるよ」
「いや、刺されたくないし場所はわかるから一人で大丈夫」
「う゛お゛ぉいっ!! なんでテメーがここの中身を知ってんだぁっ!!」
「さすがはドン・ボンゴレねぇ」
「う゛お゛ぉいっ!! 妙なとこで感心してる暇があったらこいつを叩きだせぇっ」
「無理ッ」
 
ルッスーリアの即答にプチプチとスクアーロの額に浮き出た血管が切れる音がする。
綱吉の実力に触発されたのかベルフェゴールは殺意を隠そうともせずに綱吉の背後へと忍び寄る。
ルッスーリアも表面上は感嘆の声を上げながら、そのサングラスの下で目を鋭く光らせながら綱吉の隙をうかがっていた。
この場にいる誰か彼かの好奇心が綱吉に振りかかる前にこの状況をなんとかしなければならないと気付いたスクアーロは軽く舌打ちする。
警告の意味を込めて綱吉に切りかかろうとスクアーロがわずかに左手を動かした瞬間、少し離れた場所で聞きなれた爆発音が鳴り響いた。

「ッ!!」
「あらやだ、ボスの癇癪が始まっちゃったみたい」
「うししししっ、こいつを早く行かせないとホントに焼き鮫になっちゃうね。でも焼いても鮫は不味そぉー」
「ふざけんなぁ! 誰が焼かれるかぁっ!!」
「ごめんねスクアーロ、ザンザスには怒らないようにオレからきちんとお願いしておくから」
「う゛お゛ぉいっ!! テメーそれが逆効果だって絶対わかって言ってんだろぉがぁぁぁぁあ゛あ゛っ!!」

綱吉は背中でスクアーロの大声を受けながら返事をするかわりに軽く手を上げる。
その背中を見送りながらスクアーロは後で自分に降りかかるであろう盛大な八つ当たりを想像して顔をしかめた。


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