さっきまで外にいた銀時の身体にはまだ冬の空気が纏わ
り付いていて、土方は身動き出来ないほどに抱き締めら
れてもほとんど暖かさを感じない。
銀時の服はいまだに冷えきっていて、密着する事で土方
の隊服を通してその体温を奪おうとする。
冷えて低下していく身体に肌が泡立つような寒けが走り
、思わず身震いした土方の振動はそのまま銀時へと伝わ
る。
「あれ?副長さんもしかして感じちゃってる?」
「んなわけあるかっ!!早くどけっ。」
「え〜、だってほら、ちょっと立ち上がってるよ?…乳
首。」
「なっ、ばっ、……っ」
土方を抱き締めていたはずの手は、いつの間にかシャツ
を滑って胸の突起辺りを撫でるように動かされている。
ごそごそと動く銀時の手に小さな引っ掛かりが触れる。
その変化を持ち主に教えるような動きを布越しに感じて
、土方が悲鳴を上げた。
「寒気と悪寒で鳥肌立ってるだけだっ!!人間だったら
誰でもなる自然現象だろうがぁっ!!」
「何それ。じゃあ寒い日の女の子は皆あのふわっふわな
可愛い服の下で乳首立たしてるとか言うの?副長さんっ
て見回り仕事の振りしてそんな事妄想してんの?このむ
っりスケベ。」
「誰もそんなこと言ってねぇっ!!勝手に妄想膨らまし
てんのはお前の方じゃねぇかぁぁぁぁっ!!」
「ちょっとぉぉっ、そんなに暴れたら危ないでしょっ。
ほらっ手が滑っちゃったじゃない。」
「うぁっ…嘘吐くんじゃ、ねっ……冷っ、てぇ…」
銀時はまた暴れだした土方の動きを利用して、二人の間
に上手く作った隙間から器用にシャツのボタンを外し、
懐へと手を忍ばせる。
直に触れてきた皮膚の固い手の冷たさに、土方は耳の産
毛までが逆立つほどの鳥肌を立てて全身を竦めた。
「乳首、さっきより硬くなってるよ?まわりもなんかざ
らついてるし。本気で感じ出しちゃった?」
「だからッ…鳥肌だっつってんだろうがっ!氷みたいな
手ぇしやがって…。」
「なぁに、副長さん知らないの?手が冷たい人は心が暖
かいんですぅー。だから銀さんの手が冷たいのはそれだ
け君に対する気持ちが暖かいって言うかぁ、寧ろ熱すぎ
るぐらいだって証拠なんですけど。」
「わけわかんねぇ事ばっか、言いやがって。マジ離せっ
、冷たくて凍えちまうっ。」
「冷たいのが嫌ならその肌で温めて?」
耳元で囁かれた銀時の言葉を誤魔化すより先に身体が強
張り、何が言いたいのかわからないと突っぱねることに
失敗した黒い瞳が見開かれたまま凍る。
冷たい手が土方の暖かい部分を求めて位置を変えるたび
に、銀時の手に体温を奪われていくような感覚と、新た
に湧き上がる鳥肌に痛みすら感じる。
室温は銀時が来たときに入れ替えられた空気のせいで、
まだ温まりきっていない。
外よりは少しマシという程度の室内で、他人に熱を奪わ
れ低下する体温に身体が危険信号を発する。
土方の肉体が本能的に熱を生もうとして、無意識に全身
の筋肉に収縮を始めるよう脳からの指令が下る。
そうなると必然的に身体は小刻みに震えて、銀時を引き
剥がそうとする指にも当然力が上手く入らなくなった。
「もっ、やめッ…寒ぃ……。」
土方の肌は余すところ無く総毛立ち、言葉が嘘ではない
ことを言外に伝え続ける。
抵抗の少なくなった土方に気付いた銀時の手の動きが、
体温を奪うものから熱を上げるものへと目的を変えた。
ただ熱を奪うためだけに肌と接触していた掌が、別の意
思を持って這いずり回る。
「なっ!!ふざけるっ、な!!」
「ふざけてないよ、寒いんでしょ?身体暖めるにはこれ
が一番手っ取り早いんだってことくらい、わかってるで
しょ。」
「だめっだ、テメェはっ…ハッ、ここがどこだか、わか
ってんのかよっ!」
「うん、わかってるよ。アンタが副長さんっていうお仕
事中だって事も、いつ神楽たちが帰ってくるかわからな
いって事もひっくるめて全部。」
「だったらなん、でっ……ひぅっ」
きめの細かい肌の手触りを楽しんでいた銀時の手が、胸
の突起にたどり着いて動きを変える。
銀時は指先でゆっくりとそこの形を辿った後、何の遠慮
も無く摘まみ揉んで押しつぶした。
いきなりのあからさまな刺激に、土方は息を詰めて顔を
背ける。
胸先を弄られている間中、歯をくいしばり硬く瞼を閉じ
て快感に耐える。
皮膚を粟立たせるのは寒さのせいではなく、身体の震え
の原因もすでに脳からの指令ではなくなっていた。
凍えて青白くなっていた土方の頬に赤みが差し、額には
うっすらと汗すら滲む。
土方にとって、もうこれ以上の刺激は男としての本能的
欲求に流されてしまいそうだった。
「…このっ、バッカヤロ…ゥ」
「………はい、お終い。」
「っ、……は?」
あっけらかんとした声と共に、何の前触れも無く銀時の
身体がすっと離れる。
顔を上気させて少し息を乱した土方は呆然と銀時を見つ
めた。
「身体、暖まったでしょ?」
「はぁ?」
「そんな物足りなさそうな顔しなさんなって、せっかく
我慢してるのに続きやりたくなるじゃん。だけど銀さん
これでも大人だからさ、TPOにはうるさいのよ。」
「てめっ、コノヤロッ!!誰がンな面するかっ!!大体
なぁ、テメェの腐った脳みそのどこにTPOなんて御高尚な
モンがあるってんだぁぁぁっ!!!」
土方は叫びながらもこっそりと刀の位置を確認した。
案の定、刀は銀時の背後にあり、土方が手に出来る間合
いでは到底無かった。
こういう所が抜け目無くて油断なら無いんだと、土方は
心の底で舌打ちする。
「んもう、またそんな怖い顔して。そんなんだから『鬼
の副長』なんてあだ名つけられんだよ、本当はあんなに
可愛いのに。」
「今すぐ出て行けェェェッ!!!」
「酷いなぁっ、俺ちゃんと身体暖めてあげたでしょッ!
それだけで終わったでしょッ!!そのお礼に神楽が来る
までここで待っててもいいよとか何とか言う人間らしい
台詞がどうしていえないのッ!!」
「根本的に間違ってんだって事を自分で気付けェッ!!
」
「もーぅ、わかった。そんなわからずやには銀さんも大
人の仮面脱ぎ捨てるからねっ!さっきの続きやっちゃう
からねッ!!最中に神楽が来たって副長さんに襲われて
無理矢理って言っちゃうからっ!!」
今にも掴みかかろうとする銀時の血走った目に本気を感
じた土方は、思わず後ずさって叫んだ。
「うわーーーーっ、止めろッ!!わかった、わかったか
ら近寄るなッ!!チャイナでも何でも好きなだけ待って
りゃいいだろぉ!」
「チッ。」
「おいテメッ、なんだその不服そうな面ぁ!!もうホン
ット、この畳の線からこっち入って来んじゃねぇぞっ!
!!」
目くじらを立てて焦り怒鳴る土方を銀時がいつもの濁っ
た目で楽しそうに眺めている。
土方にはそのあまりに余裕な素振りが癪に障った。
年齢など殆ど変わらないはずなのに、一人喚く自分がや
けに子供じみている気がする。
本当は今すぐにでも銀時を部屋から追い出すか、それが
出来ないのであれば自分が出て行きたかった。
しかし土方のプライドでは自ら退散するなどとは出来ず
、半ば意地になって、大きく開いた口を噤み浮いた腰を
ドカリと畳に押し付けるように座り込む。
その様子に銀時は目を細めて笑った。